先日、製造業を営む社長から「不動産を買うとき、個人と法人ってどっちが得なんですか?」という相談を受けました。

すでに物件の目星はついていて、あとは名義をどうするか決めるだけ、という段階でした。「どちらでもそんなに変わらないかな」とふんわり考えていたそうです。でも、話を聞いていくうちに「これは絶対に法人で買ったほうがいい」と確信しました。

その理由を、今日は具体的な数字でお話しします。

仲介手数料300万円が「経費ゼロ」になる怖さ

1億円の物件を購入する場合、不動産会社に支払う仲介手数料はおよそ300万円前後になります(上限は物件価格の3%+6万円+消費税)。

これを個人で購入した場合、この300万円は基本的に経費になりません。マイホームならそもそも経費という概念がありませんし、投資用であっても取得原価に含める処理が原則です。つまり「払ったけど、税務上は何も得しない支出」になりやすい。

一方、法人で購入すると話がまったく変わります。

仲介手数料は、その不動産を取得するためにかかった費用として、全額を損金(≒経費)に算入できるのです。300万円がそのまま会社の費用として落ちる。法人税率が30%であれば、それだけで約90万円の節税になります。

仲介手数料だけじゃない。登記費用や印紙代も同様

不動産を購入するときにかかるコストは、仲介手数料だけではありません。

所有権移転の登記費用、ローンを組む場合の抵当権設定費用、そして売買契約書に貼る印紙代。これらも法人名義であれば、原則として損金に計上できます。

先ほどの社長のケースでは、仲介手数料の約300万円に加え、登記関連費用や印紙代を合わせると400万円を超える金額が損金として計上できました。法人税率30%で計算すると、約120万円の節税効果です。

「知らずに個人で買っていたら」と考えると、少し背筋が寒くなりませんか。

なぜ法人だと経費にできるのか

個人の場合、不動産購入にかかる諸費用は「その資産を取得するためのコスト」として資産の一部に組み込まれる扱いになりがちです。つまり経費として即座に引けるわけではなく、減価償却を通じて少しずつ回収していくか、売却時に取得費として控除するか、という形になります。

法人の場合は、仲介手数料などの取得付随費用について、**取得価額に含める方法と、期間費用として損金処理する方法の選択が認められているケースがあります。**実務では仲介手数料や登記費用を一括で損金算入している法人が多く、これが大きな節税ポイントになっています。

ただし「何でも経費にできる」というわけではなく、不動産取得税や固定資産税の日割り精算分など、資産計上すべきものとそうでないものが混在しています。ここは税理士と一緒に仕分けをしっかりやる必要があります。

判断が難しい費用もある。だからこそ事前の相談が大事

法人での不動産購入はメリットが大きい一方、費用の区分には慎重さが必要です。

たとえば、取得後にリフォームや改装を行った場合、その費用が「修繕費(即時損金)」なのか「資本的支出(資産計上して減価償却)」なのかの判断は、金額や工事内容によって変わります。安易に全額経費にすると、税務調査で指摘を受けるリスクもあります。

購入前に「どの費用をどう処理するか」を顧問税理士と確認しておくことが、節税効果を最大化するうえで欠かせないステップです。

購入後に「あの費用、どう処理しましたっけ?」と聞くより、契約前に「この費用は損金になりますか?」と確認するほうが、ずっとスマートです。

個人か法人か、その判断は物件購入前に

法人で不動産を持つことには、節税以外にも相続対策や資産の分散といったメリットがあります。一方で、法人の不動産は売却時の税率が個人と異なるなど、長期的に見たときのトータルコストも考える必要があります。

どちらが正解かは、会社の状況や物件の用途、将来の売却プランによって変わります。ただ一つ確かなのは、「どちらでも同じ」ということはない、ということです。

不動産の購入を検討しているなら、物件選びと並行して「名義をどうするか」を税理士に相談するのが最善の順番です。購入後では取り返しのつかない選択になることも少なくありません。数百万円の差が出ることもあるのですから、事前確認はコストではなく「投資」です。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。