先日、役員報酬を2,000万円に設定している製造業の社長から、こんな相談を受けました。
「会社の業績は好調なんですが、税金がとにかく重くて。何か手はありますか?」
所得税と住民税を合わせると、実効税率は50%を超えてくる水準です。稼いでも半分近くが税金で消えていく感覚は、やはり辛いものがあります。そこでお話ししたのが、法人で不動産を取得するという方法でした。
「不動産なんてうちには関係ない」と思った方、少し待ってください。これは規模の大小に関わらず、役員報酬が高い社長ほど効果が出やすい節税手法です。
法人で不動産を持つと、経費の塊になる
法人が不動産を取得すると、複数の項目が法人の経費として計上できます。
まず減価償却費。建物は法定耐用年数に従って毎年経費化できます。木造なら22年、RC造なら47年が法定耐用年数ですが、築古物件であれば残存耐用年数が短くなるため、短期間に大きく経費を積み上げられるケースもあります。
次にローン利息。法人で購入した物件の借入利息は、そのまま経費です。これに加えて、管理費・修繕費・固定資産税・火災保険料も法人の経費として落とせます。
これらを合計すると、条件のいい物件であれば年間1,200万円程度の経費を作ることも珍しくありません。法人実効税率を34%として計算すると、1,200万円 × 34% = 約400万円の節税効果になります。
個人で持つと、高い税率が直撃する
では、同じ不動産を個人で買ったらどうなるか。
個人で不動産を所有すると、家賃収入は「不動産所得」として役員報酬に上乗せされます。すでに役員報酬が2,000万円ある社長であれば、課税所得はさらに積み上がります。
所得税は超過累進課税ですから、上乗せ分には最高税率の45%(住民税10%と合わせて55%)が適用されてしまいます。同じ家賃収入でも、個人で受け取るのと法人で受け取るのとでは、税負担がまったく違う。
法人化することで、不動産収益を役員報酬の課税ラインから切り離せる。これが最大のメリットです。
役員報酬が高いほど、差は広がる一方
ここで少し比較してみましょう。
役員報酬が500万円の社長と2,000万円の社長では、法人不動産のメリットの大きさがまるで違います。500万円の社長は、不動産所得が乗っても適用税率は30〜40%台。法人の実効税率(34%前後)と大きな差がないケースもあります。
一方、2,000万円の社長は所得税・住民税合計で50%を超えてくる。法人の34%との差額は15〜20ポイントに広がります。経費1,200万円に対して20ポイントの差があれば、それだけで年間240万円の差。減価償却による課税の繰り延べ効果も加えると、冒頭の400万円という試算もリアリティのある数字です。
やる前に確認しておきたいこと
法人での不動産取得は節税効果が大きい一方、事前に整理しておきたい点もあります。
物件の選び方については、法定耐用年数が残っている物件より、築古の物件のほうが短期間での経費計上が大きくなります。ただし、売却時の税務処理もあわせて検討が必要です。
キャッシュフローも見落としがちなポイントです。減価償却は非現金経費ですが、ローン返済は現金が出ていきます。帳簿上の利益と実際のキャッシュのずれには注意してください。
融資の受けやすさについても、法人での不動産融資は個人と審査基準が異なる金融機関もあります。事前に複数の金融機関に打診しておくのが得策です。
役員報酬が1,500万円を超えているなら、法人での不動産取得は一度顧問税理士と真剣に検討してみる価値があります。「自分には関係ない」と思って何年も放置している間に、数百万円単位の税金を払い続けているケースは少なくありません。今期の決算前に、一度シミュレーションを依頼してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。