先日、3月決算の不動産賃貸業を営む社長から、こんな連絡が入りました。

「税理士に『今月が最後のチャンスだ』と言われたんですが、具体的に何をすればいいのかわからなくて」

その社長は年間の利益が4,000万円を超えていましたが、これまで節税に本気で取り組んだことがなかったそうです。話を聞いてみると、不動産オーナーが3月末までに使える節税手法を、まったく知らなかったことがわかりました。

3月決算の会社にとって、3月末は節税の「締め切り」です。それを過ぎれば、どれだけ有効な手法でも今期には使えません。今回は、3月末までに動けば合計500万円以上の節税が狙える3つの手法をご紹介します。

修繕費を「今期」に引き込む

最初にお伝えしたのが、修繕費の前倒し計上です。

所有する物件に修繕の予定があるなら、3月末までに工事を完了させ、かつ代金の支払いも済ませることで、今期の損金として計上できます。来期に予定していた修繕を今期に前倒しにするだけで、それが今期の節税に変わります。

たとえば、外壁塗装や屋根の防水工事など、総額1,500万円の修繕があるとします。実効税率を30%として計算すると、約450万円が今期の税金から減ることになります。「いつかやらなければ」と先送りにしていた修繕があるなら、今期が動き時です。

ただし、工事完了と支払いが3月末に間に合わなければ、今期の損金にはなりません。業者との日程調整は早めに動かすことが大切です。また、建物の価値を高める「資本的支出」と判断される工事内容は、全額即時計上ができないケースもあります。工事内容を税理士に確認してから発注するのが安全です。

帳簿に眠る「ゾンビ設備」を片付ける

2つ目は、老朽設備の除却損です。

事業者の帳簿を見ると、実際にはもう使っていない設備が帳簿価額を残したまま眠っていることがよくあります。古いエアコン、使われなくなった機械設備、倉庫に放置されたパソコンなど。これらを3月末までに廃棄すれば、その帳簿価額を一括で損金算入することができます。

「廃棄した」という事実を証明するために、産業廃棄物処理業者の領収書や廃棄証明書は必ず保管してください。書類がないと税務調査で否認されるリスクがあります。

設備1台あたりの金額は小さくても、複数まとめれば数百万円になることもあります。まずは固定資産台帳を開いて、「もう使っていないもの」を棚卸してみてください。意外と見落としている設備があるかもしれません。

来期分の地代・家賃を今期に落とす

3つ目は、地代・家賃の短期前払いです。

テナントや事務所の家賃を支払っている側の話ですが、1年分の地代・家賃を3月末に一括前払いすることで、来期分も含めて今期の損金に算入できます。これは「短期前払費用の特例」という制度を活用します。

条件は2つあります。前払い期間が1年以内であること、そして毎年継続して同じ処理をすること、です。「今期だけ節税したいから」という単発では使えません。来年も同じように前払いし続けることが前提です。

月100万円の地代があれば、12ヶ月分で1,200万円の前払い。税率30%なら360万円の節税になります。継続適用が条件ですが、毎年使い続けることができる点で、長期的に見ると非常に優れた手法です。

3手法を組み合わせると何が起きるか

ここまでの3手法をすべて活用できれば、節税効果の合計は500万円を大きく超えることもあります。

  • 修繕費前倒し:約450万円節税(1,500万円工事の場合)
  • 除却損:帳簿価額次第で数十〜数百万円
  • 短期前払い:地代規模次第で数百万円

とはいえ、「できそうだから自分で処理しよう」とはならないでください。特に修繕費と資本的支出の区分は、金額や工事内容によって判断が変わります。自己判断で修繕費として計上したものが、税務調査で否認されて追徴課税になるケースは珍しくありません。

節税の実行前に、担当の税理士に内容を確認することを強くおすすめします。

動くなら今日中に、税理士へ一言を

3月決算の方にとって、残り時間はわずかです。業者への発注、固定資産台帳の確認、前払いの手続き。どれも「来週やろう」では3月末に間に合わない可能性があります。

「うちはどれが使えますか?」という一言を税理士に投げるだけで、今期の納税額が大きく変わることがあります。節税は、法律の範囲内で期限内に動いた人だけが使える権利です。

まだ動いていないなら、今日中に税理士へ連絡することをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。