先日、3月決算の製造業を営む社長からこんな相談を受けました。「今期は利益が出すぎてしまって、どうにかならないか」と。その方の会社、今期の純利益は約1,500万円。法人税等だけで500万円超の支出が見込まれていました。
そのときお伝えしたのが、「中古不動産の減価償却活用」です。うまく使えば、今期だけで法人税を大きく圧縮できる可能性がある手法です。3月決算の社長には、ぜひ最後まで読んでほしい内容です。
耐用年数の「短縮」が節税の核心
新築の木造建物は、税法上の耐用年数が22年です。でも、すでに法定耐用年数を超過した中古の木造建物を取得した場合、耐用年数の計算式が変わります。
「法定耐用年数 × 20%」で計算するため、木造(22年)なら22年 × 20% = 4.4年、端数切捨てで4年。条件次第では最短2年になるケースもあります。この「短い耐用年数」こそが節税の核心です。耐用年数が短いほど、毎年計上できる減価償却費が大きくなります。
3,000万円の物件で510万円の法人税圧縮
たとえば、築25年の木造アパートを法人で取得したとします。建物価格が3,000万円で耐用年数が2年(定額法)の場合、年間1,500万円を減価償却費として計上できます。
1,500万円の経費が増えると、課税所得がその分だけ減ります。法人税・住民税・事業税を合わせた実効税率は概ね34%前後。計算すると、1,500万円 × 34% = 約510万円。つまり、今期の法人税を500万円以上圧縮できる計算になります。
3,000万円の物件を買って、500万円以上の税金が減る。数字だけ見ると、かなりインパクトのある手法です。
ただし「節税」ではなく「繰延べ」と理解する
ここで必ず理解しておきたいのが、これはあくまでも「課税の繰延べ」だという点です。
減価償却で今期の利益を圧縮できても、その分は将来の売却時に戻ってきます。不動産を売るとき、取得価格から減価償却累計額を差し引いた「簿価」が低くなっているため、売却益が大きく出やすくなり、そこで法人税がかかります。
つまり「今払う税金」を「将来払う税金」に先送りする仕組みです。それでも有効な理由は、「今の500万円と将来の500万円は価値が違う」から。手元のキャッシュを今期守り、その分を運用に回せる。それ自体に大きな経営的価値があります。
3月決算に間に合わせるタイムライン
この手法を3月決算で使うには、3月31日までに「取得決済」を完了させることが前提です。契約書の締結だけでは不十分で、所有権移転・決済まで終わっている必要があります。
現金購入なら比較的スピーディに動けますが、融資を使う場合は審査に数週間かかることも。残り時間を逆算して、判断は早めに行ってください。登記費用・不動産取得税・司法書士報酬なども含めた総コストを把握した上で、手元資金が枯渇しないかも必ず確認しましょう。
購入前に確認しておきたい3つのポイント
実践前に必ずチェックしておきたいポイントがあります。
ひとつ目は建物と土地の価格配分です。減価償却できるのは建物のみ。同じ3,000万円の物件でも、建物が1,000万円しか含まれていなければ、減価償却できる額は3分の1になります。固定資産評価証明書や売主の按分根拠を事前に確認してください。
ふたつ目は売却時のシミュレーションです。繰延べた税金がいつ、いくら戻ってくるかを試算しておくことで、出口戦略を明確にできます。
三つ目は賃貸収入と管理コストです。節税目的だけで不動産を持つと、空室リスクや管理負担が経営の足かせになることもあります。事業としての採算も必ず検討してください。
今期の利益を守るために打てる手は、まだある
決算前に「何かできることはないか」と頭を抱えている社長にとって、この手法は有力な選択肢のひとつになりえます。ただ、不動産の取得は金額も大きく、税務上の処理も複雑です。「3月決算に間に合うか」「この物件の建物比率はいくらか」「売却時の税負担はどう試算するか」——この3点を担当の税理士と確認した上で動いてください。
手法の概要だけ掴んで突っ走るのは危険ですが、正しく理解して動けば、決算前の最終カードになります。まだ間に合う可能性があるなら、今すぐ税理士に電話してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。