「先生、うちの決算、今年から法人税がまた増えるって本当ですか?」

先月、年商10億を超える製造業の社長から、こんな電話がかかってきました。声に少し焦りが混じっていました。その心配は、残念ながら正しかったのです。

2026年、法人の税負担がひっそりと増えた

2026年4月以後に始まる事業年度から、防衛特別法人税が新たに課されることになりました。

内容はシンプルで、法人税額が500万円を超えた部分に対して4%の追加課税がかかります。「4%くらい大したことない」と思うかもしれませんが、課税所得が5,000万円を超えるような会社であれば、この一手で軽く数百万円が消えます。何の対策もせずに決算を迎えると、例年より静かに、でも確実に納税額が跳ね上がります。

対策を知っているかどうかで、数百万円の差がつく時代になりました。

今すぐ使える本命の手が「不動産の減価償却」

課税所得を圧縮する方法はいくつかありますが、今期の決算に最も効果が見込めるのが、法人での不動産購入と減価償却の活用です。

仕組みを簡単に説明します。たとえば、耐用年数10年と計算できる中古物件を1億5,000万円で法人名義で購入したとします。すると毎年1,500万円を経費(減価償却費)として計上できます。法人の実効税率がおよそ34%だとすれば、1,500万円 × 34% ≈ 年間約500万円の節税効果になります。

これは1年だけではなく、耐用年数の10年間、継続して受けられる効果です。もちろん、物件の選定・法人スキームの設計・資金調達と、やることは多い。しかし「毎年500万円」という数字を目の前にすれば、動かない理由を探すほうが難しいはずです。

問題は「時間が足りない」こと

ここで多くの社長がぶつかるのが、時間の壁です。

不動産の取得には、物件の探索から始まり、法人名義での融資審査、売買契約、登記完了まで、順調に進んでも3〜4カ月はかかります。今期の決算月が近い会社では、動き出すタイミングが今この瞬間でなければ、節税効果が来期にずれ込んでしまいます。

「来期からやればいい」と言いたいところですが、防衛特別法人税は今期から始まっています。来期も同じ税負担がかかることを考えると、1年分の節税機会を逃すコストは非常に重い。動き始めるのに「もう少し状況を見てから」は通用しないのが、不動産節税の特徴です。

法人不動産節税で押さえるべき3つのポイント

実務で気をつけるべき点を整理しておきます。

物件の耐用年数の計算が節税効果の肝になります。新築よりも築古の中古物件のほうが残存耐用年数が短くなり、短期間で大きく減価償却できるケースがあります。ただし、計算方法を誤ると思ったような効果が出ないこともあるので、事前の試算が必須です。

法人の資金繰りと融資の見通しも確認が必要です。物件購入には相応の自己資金か、法人融資の枠が必要になります。融資審査には会社の決算書2〜3期分が求められるため、早めに動かないと間に合いません。

不動産の出口戦略も最初から設計のうちです。法人購入した物件は、将来売却する際に法人の収益として課税されます。長期保有で賃料収入を得るのか、一定期間で売却するのかを最初から決めておくことで、全体の税負担を最適化できます。

増税時代に「守る」のは経営者の仕事

増税というと「仕方がない」と受け入れてしまう社長が少なくありません。しかし税法の枠内で合法的に利益を守ることは、経営者として当然の責務だと私は考えています。

防衛特別法人税への対策として不動産節税は有力な選択肢のひとつですが、会社の財務状況や事業計画によって最適な手は変わります。「今年から税額が増えるかもしれない」と少しでも気になった社長は、まず現状の税負担の試算から始めてみてください。決算直前の駆け込みでは間に合わないのが不動産節税の現実です。信頼できる税理士への相談は、早ければ早いほど選択肢が広がります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。