先日、ある社長からこんな相談を受けました。
「うちは3月決算なんだけど、毎年この時期になると税金の額を見て気が重くなる。何か手はないかな」
年商3億円の食品製造業、社長は57歳。決算2ヶ月前にようやく今期の利益が見えてきて、慌てて相談に来られました。そのときにお伝えした話が、今日のテーマです。
税務署は、この節税を教えてくれない
法人で「築古の木造物件」を買う節税策、ご存じでしょうか。
驚くほど効果的なのに、知っている社長が少ない。なぜかというと、税務署はこういった節税策をわざわざ案内してくれないからです。合法的な制度であっても、行政は「こうすれば税金が減りますよ」とは言いません。知っている人だけが使えるルール——それがこの仕組みです。
「耐用年数オーバー」の物件が最強の節税になる理由
まず、建物の減価償却を簡単に整理します。
法人が建物を購入したとき、取得費用はすぐに全額経費にできません。国が定めた「耐用年数」に沿って、少しずつ経費化していきます。木造建物の法定耐用年数は22年です。
ただし、中古物件の場合は計算が変わります。耐用年数を超えた中古建物は、残存耐用年数が「法定耐用年数×20%」で計算されます。木造なら22年×20%=4.4年、端数切り捨てで4年です。
この「4年」というのがポイントです。
たとえば、取得費用6,000万円の物件で、建物部分が1,500万円だとします。通常の木造新築なら22年かけて経費化しますが、耐用年数オーバーの中古なら4年で全額経費にできる。年間375万円の経費が生まれます。法人の実効税率は約34%ですから、年間約128万円、4年トータルで500万円超の節税効果になります。
3月決算だからこそ、今動く意味がある
「不動産はすぐに買えないよ」と思われるかもしれません。ただ、3月決算の法人には大事な締め切りがあります。
3月決算の法人税申告期限は5月31日です。
不動産は登記が完了した時点で「取得」になるので、3月末までに決済が完了すれば今期の経費として計上できます。逆に言えば、4月以降に動いても今期は間に合いません。「来期こそは」と思っているうちに、また1年が過ぎていく——よくある話です。
今の時期(1月〜2月)から物件を探し始めることで、3月末の決済に現実的に間に合います。
どんな物件を探せばいいのか
条件をざっくり整理すると、こういった物件が対象になります。
- 築22年超の木造建物(耐用年数を超えているもの)
- 土地と建物の価格が分けて記載されている売買契約
- 事業として成り立つ収益物件(利回りが出るもの)
特に「建物価格と土地価格の内訳」は重要です。建物部分が大きいほど経費化できる金額が増えます。消費税の有無から逆算する方法(建物には消費税がかかるが土地にはかからない)もよく使われます。
物件の立地は都市部・地方を問いませんが、節税だけを目的に採算割れの物件を買うのは本末転倒です。「税金が減っても、キャッシュが消えていく」という状態は避けなければなりません。
気をつけたい落とし穴
よくある失敗が「節税になると聞いてとりあえず買った」というケースです。
不動産投資には空室リスク、管理コスト、売却時の出口戦略など、税務以外の要素がたくさんあります。築古物件はそれだけ修繕費もかさみやすい。数字だけで判断せず、不動産の専門家と税理士の両方に相談することが鉄則です。
また、法人の事業と関連が薄い不動産取得は、税務調査で指摘されるリスクもゼロではありません。取得の目的や資金調達の方法について、合理的な説明ができる状態にしておくことが大切です。
「知らなかった」で払い続けるのが一番もったいない
冒頭でご紹介した社長は、その後、税理士とともに物件探しを始めました。今期中に間に合うかはまだわかりませんが、「こういう選択肢があること自体、知らなかった」とおっしゃっていました。
法人税の節税策は、知っている人だけが使えるルールで動いています。築古木造物件の減価償却節税は、その代表例のひとつです。
3月決算の方は、まず今期の利益見込みを確認したうえで、税理士に「不動産を使った節税、今期で動けますか?」と一度聞いてみてください。動き出すのは、早いほど選択肢が広がります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。