先日、ある社長からこんな相談を受けました。「3年前に税理士に勧められてやった不動産スキーム、大丈夫ですよね?」——その質問の裏に、うっすらとした不安が滲んでいました。

節税の効果が出ているときは誰も疑わない。でも、税務署は静かに、そして長く、見ています。

「5年の壁」は実は7年になることがある

税務調査には「除斥期間」という時効のようなものがあって、通常は5年さかのぼって調べることができます。多くの社長がこれを「5年逃げ切れれば大丈夫」と理解しているのですが、これが落とし穴です。

法人が「不正行為」と判断された場合、この除斥期間は7年に延長されます。つまり、今から7年前の取引まで全部ほじくり返されるということです。

2026年現在で言えば、2019年の節税策まで遡られる可能性がある。7年前の賃料設定の根拠、法人設立の経緯、契約書の中身——全部出してください、という話になります。

特に危険な「形だけの法人スキーム」

不動産節税の中でも、税務署が目を光らせているのが実態を伴わないスキームです。

典型的なのが、家族名義の法人に賃料を移す手法。法人を作ること自体は合法ですが、「実際に管理業務をしているか」「賃料は市場相場と乖離していないか」「法人としての実態があるか」——これらを全部チェックされます。

書面上は完璧に見えても、代表者が法人の存在をほぼ認識していなかったり、業務実態がペーパー一枚だったりすると、「形式だけの租税回避」と否認される可能性が出てきます。

発覚したときのダメージは想像以上

問題は、否認されたときの追徴額の大きさです。

通常の修正申告では本税+延滞税で済みますが、「不正行為」と認定されると重加算税35%が加算されます。さらに7年分の延滞税が乗ってくるため、最終的に本税の50%超が上乗せされるケースも珍しくありません。

仮に7年間で節税できた金額が2,000万円だったとしても、追徴課税で1,500万円以上取り返される——こういう事態が現実に起きています。節税どころか、余計に払うことになってしまう逆転劇です。

正しく使えば、不動産は最強の節税手段

誤解しないでいただきたいのですが、不動産を使った節税が全て危険なわけではありません。実態のある法人スキーム、市場相場に沿った賃料設定、適切な管理契約——これらが揃っていれば、不動産節税は法人オーナーにとって強力な武器になります。

大切なのは「形式」ではなく「実態」です。

節税効果だけを優先して、事業実態の薄い法人を作ったり、著しく低い賃料を設定したりすることが問題の根本。税理士から「節税になります」と言われても、「なぜ節税になるのか」「税務署に否認されるリスクはないか」をきちんと確認する習慣を持つことが重要です。

今すぐ確認しておくべきこと

現在、不動産を使った法人節税スキームを組んでいる社長は、以下の点を一度見直してみてください。

  • 賃料設定に近隣相場との比較根拠があるか
  • 法人が実際に管理業務を行っている記録(契約書・議事録・振込履歴)が残っているか
  • スキームの設計時に税理士から書面での説明を受けているか

これらが曖昧なまま数年が経過しているなら、今すぐ顧問税理士と話し合うことをおすすめします。除斥期間の時計は、今この瞬間も動いています。

節税は攻めるものですが、土台が崩れれば全て瓦解します。リスクを正しく理解した上で、長く安心して使える節税策を設計してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。