先月、ある製造業の社長からこんな電話がかかってきました。「税務調査が来たんだけど、不動産がメインターゲットになっていて…」。その社長、節税目的で数年前に不動産保有法人を設立したばかり。節税効果は確かにあった。でも、気づかないうちにいくつかのNG行動を積み重ねていたんです。
法人で不動産を保有する節税スキームは、正しく運用すれば絶大な効果があります。でも、税務署もそれを十分承知しています。不動産保有法人は「重点調査対象」として特別なリストに載りやすく、調査確率は一般法人の数倍とも言われています。
問題は、NG行動のほとんどが「うっかりミス」だということ。悪意なく、なんとなくやってしまっている。だからこそ、事前に4つのポイントを押さえておくことが重要です。
社宅賃料を「感覚」で設定している
法人が社長や役員に社宅を貸す場合、適正な賃料を取らないと現物給与として課税されます。これが意外と知られていない。
「まあ近隣相場より安くすれば節税になるだろう」と感覚で賃料を設定している会社が多いんですが、実は国税庁の通達に明確な計算式があります。固定資産税課税標準額や面積をもとに計算した「最低限の賃料」を下回ると、その差額が役員の給与所得として認定されてしまうんです。
調査官はこの賃料設定を真っ先に確認します。「なぜこの賃料にしたのですか?」と聞かれたとき、「なんとなく安くしました」では説明になりません。通達ベースの計算書を顧問税理士と一緒に用意しておくことが必須です。
修繕費と資本的支出を混同している
不動産を保有していれば、定期的に修繕が発生します。この修繕費の取り扱いが、税務調査で最も頻繁に争点になるポイントの一つです。
修繕費(現状回復)はその年の経費として全額落とせますが、資本的支出(価値を高める改修)は資産計上して減価償却しなければなりません。この区別を曖昧にしていると、後から「これは資本的支出だ」と否認されて追徴課税を食らうことになります。
たとえば外壁塗装1件でも、単なる劣化補修なのか、機能を向上させるものなのかで処理が変わります。工事内容の詳細な記録と、税理士との事前確認が欠かせません。金額の目安としては、1件20万円以上・耐用年数を延ばす工事は特に要注意です。
購入・売却に議事録を残していない
法人として不動産を売買するとき、取締役会や社長決定の議事録を作成していない会社がかなり多いです。「自分の会社なんだから自分で決めれば済む話では?」と思われるかもしれませんが、法人の取引はそうはいきません。
議事録がなければ、税務署側から「この取引に正当な経営判断があったのか」と疑われます。特に、個人と法人の間での取引(社長個人から法人に売る、または法人から社長個人に売るなど)は、「恣意的な取引」「租税回避目的」と判断されるリスクが高い。
議事録には日付、取引の目的、価格決定の根拠を明確に記載しておきましょう。面倒に感じるかもしれませんが、1枚の議事録が後々の何十万円もの追徴課税を防ぐことになります。
私的費用を経費に混ぜ込んでいる
これが最も深刻なNG行動です。**重加算税(35%)**の対象になる可能性があるからです。
「不動産投資の視察を兼ねた旅行」「物件近くでの食事代」など、グレーゾーンと感じながらも経費計上してしまうケースがあります。税務調査でこれが見つかった場合、本来の追徴税額に加えて35%の重加算税が課される。さらに悪質と判断されれば、刑事事件に発展するケースもゼロではありません。
不動産法人の経費は「その法人の不動産事業に直接関連するもの」に限定して計上する。曖昧なものは計上しない、という原則を徹底することが、自分を守ることになります。
今すぐ「通達の計算式」で社宅賃料を点検してください
この4つのNG行動に共通しているのは、「なんとなく」でやってしまっていることです。悪意はない。でも税務署には関係ない。
特に社宅賃料の問題は、今すぐ税理士と一緒に国税庁通達の計算式で検証することをおすすめします。適正賃料を下回っている場合は、今期中に修正しておけばリスクを最小化できます。
不動産節税は正しく設計すれば強力な武器になりますが、4つの鉄則を守ってこそ効果を享受できる手法です。設立したばかりの法人でも、数年運用してきた法人でも、一度ここで確認してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。