先日、月収100万円のある社長からこんな相談を受けました。「売上は順調なのに、社会保険料がじわじわ増えてキャッシュが追いつかない感覚がある」と。

役員報酬を増やすほど、社会保険料の負担も増えていく——これは多くのオーナー社長が「避けられないコスト」として諦めているものです。でも、役員報酬の金額を変えずに、社会保険料を年間100万円単位で削減できる方法があります。今日はその仕組みをお伝えします。

社会保険料はなにで決まるのか

そもそも社会保険料は「標準報酬月額」をもとに計算されます。給与明細の額面がそのまま計算に使われるイメージを持っている方が多いのですが、少し違います。

毎月の報酬額をもとに「等級」が決まり、その等級に応じた金額に料率を掛けて算出されます。ポイントは、この計算に含まれる「報酬」の定義です。現金給与だけでなく現物給付も対象になるのですが——そこに節税の余白があります。

法人社宅が使われる本当の理由

法人が物件を取得して、役員に「格安」で貸す。これが法人社宅の仕組みです。家賃相当分の一部を現物給付として報酬に組み込むかわりに、現金での役員報酬を引き下げます。

肝心なのはここです。現物給付としての社宅家賃は、社会保険料の算定において「現金報酬とは異なる評価」がされます。法令で定められた「賃貸料相当額」という低い金額が評価額になるため、同じ生活水準を保ちながら標準報酬月額を実質的に圧縮できるのです。

3ステップで実現する報酬の再設計

実際の流れを整理しておきましょう。

ステップ1:法人名義で物件を取得する

社宅として使う不動産を、個人ではなく法人で購入または賃借します。購入の場合は減価償却のメリットも重なり、節税効果がさらに積み上がります。

ステップ2:役員報酬を「現金+社宅の現物給付」に再設計する

たとえば月給100万円のうち、30万円分を社宅の現物給付として整理し直します。役員が受け取る生活の価値はほぼ変わらないのに、書類上の「現金報酬」は70万円に下がります。

ステップ3:標準報酬月額が下がり、社保料が両方向に削減される

標準報酬月額が下がると、役員個人が負担する社会保険料も、会社が負担する社会保険料も、どちらも下がります。手取りはほぼ同じで、法人のキャッシュが改善する——これが設計のゴールです。

実際にどのくらい削減できるか

月給100万円の役員の場合、社会保険料は役員と会社の合計で月15〜20万円前後になります(業種や年齢で差があります)。

報酬設計を見直して標準報酬月額を数等級下げることができれば、双方を合わせて年間80〜100万円超の削減につながるケースがあります。手取りを削らずにこの金額が浮けば、会社のキャッシュフローへの影響は相当大きいはずです。

注意点:なんでもよいわけではない

ただし、この手法にはいくつか条件と注意点があります。

社宅として認められるには、役員が実際にそこに居住していることが前提です。「形式だけ」の登録は税務調査で問題になります。また、法人が支払う家賃と役員から徴収する賃料の差額が大きすぎると、「経済的利益の供与」として課税されるリスクもあります。

「賃貸料相当額」の計算は固定資産税課税標準額をもとにした計算式があり、これを正確に算出しないと、節税どころか余計なリスクを抱えることになります。設計は必ず専門家と一緒に進めてください。

今すぐ確認してほしいこと

社会保険料の負担が重いと感じているオーナー社長は、一度、自社の役員報酬の構成を顧問税理士や社会保険労務士に見直してもらうことをおすすめします。

「報酬を下げると生活が苦しくなる」と思い込んでいる方ほど、この仕組みに驚かれます。現金ではなく価値で受け取るという発想の転換が、法人のキャッシュフローを大きく改善するきっかけになります。

動きやすいタイミングは、不動産購入を検討しているときか、役員報酬の改定時期です。次の定時株主総会の前に、一度だけ専門家に相談してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。