法人で不動産を持っている社長に、こんなことがあります。

先日、複数の収益物件を法人で管理している社長と話していたとき、「うちは税理士にお任せしてるから大丈夫」とおっしゃっていました。でも、帳簿を少し見せてもらうと、取れるはずの経費がいくつも抜けていたんです。

「年間でいくら損してると思いますか?」と聞くと、計算してみて驚かれていました。

「取れる経費」は意外と見落とされている

法人で不動産を持つ最大のメリットのひとつが、個人よりも経費の範囲が広いことです。でも実際には、多くの社長が「本来取れた経費」を計上せずに申告してしまっています。

理由はシンプルです。税理士も忙しい。細かい経費の洗い出しは時間がかかるし、社長側も「これって経費になるの?」と聞かなければ、なかなか教えてもらえない。

年間200万円分の経費を取り逃がしているとしたら、法人実効税率22〜34%の計算で44〜68万円の節税チャンスが消えていることになります。それが毎年続くと、10年で数百万円の差になります。

見落とされやすい隠れ経費5つ

① 物件視察の交通費・宿泊費

管理中の物件を見に行った交通費、遠方物件の視察で泊まったホテル代。これらは不動産管理業務に直接関連するので、経費計上できます。

「視察に行った」という実態と記録があれば問題ありません。移動のたびにメモしておく習慣をつけるだけで、年間でかなりの金額になります。日帰りの新幹線往復や出張なら、1回で数万円規模になることも珍しくありません。

② 接待飲食費(1人あたり1万円以下)

2024年の税制改正で、交際費として損金算入できる接待飲食費の基準が「1人あたり5,000円以下」から「1人あたり1万円以下」に引き上げられました。

テナントや管理会社の担当者と打ち合わせを兼ねた食事代、入居者との関係維持のための会食費なども、この基準内であれば経費にできます。領収書と参加者のメモを残すのがポイントです。

③ 管理業務の通信費

物件管理に使っているスマートフォンの通信費、インターネット回線費用、クラウドストレージの使用料。これらも業務使用割合に応じて経費計上できます。

「法人の携帯だから当然」と思っているかもしれませんが、個人名義の回線でも業務使用分は経費になります。按分割合の設定は実態に基づいて判断してください。

④ 不動産関連の書籍・セミナー代

不動産投資の最新動向を学ぶための書籍、管理スキルアップのためのセミナー参加費用、税務や法律の勉強会への参加費。これらは「研修費」や「図書費」として経費計上できます。

1件あたり数千円〜数万円でも、積み上げると年間でまとまった金額になります。Amazonで不動産関連の本を買ったレシートも、きちんと残しておきましょう。

⑤ 社用車の業務使用割合分

法人の車を不動産管理業務にも使っているなら、その使用割合分の費用(燃料費、保険料、メンテナンス費用、減価償却費)が経費になります。

重要なのは「業務使用の実態」です。運行記録をつけておくと、税務調査が入ったときにも安心できます。スマートフォンのGPS記録を活用している社長もいます。

なぜ税理士は教えてくれないのか

「信頼している税理士がいるのに、なぜ教えてもらえないの?」と感じる方もいるかもしれません。

これにはいくつか事情があります。細かい経費の洗い出しは非常に手間がかかる作業で、顧問料の範囲内でどこまで深く入るかは契約内容によります。また、経費として認められるかどうかは個別事情によって変わるため、断言しにくいという面もあります。

だからこそ、社長側から積極的に「これも経費になりますか?」と確認していくことが大切です。聞けば答えてもらえることがほとんどです。

今期からでも遅くない

経費の取り逃がしは、決算が終わってから気づいても手遅れになります。

今すぐできることは、まず「領収書を捨てない」こと。物件視察の交通費、不動産関連の書籍代、セミナー参加費——すべて保管しておいてください。そして担当税理士に「この支出は経費になりますか?」と確認していく習慣をつけることです。

年間200万円の経費計上は、特別なスキームを使わなくても、日々の業務を記録するだけで近づいていけます。まず今月の支出から、一緒に見直してみませんか。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。