先日、3月決算の製造業を営む社長から、こんな相談を受けました。

「今期は利益が出そうなんだけど、何かできることってありますか?もう2月なんですよね…」

決算2ヶ月前というタイミング。焦りの色が見えましたが、実はこのくらいの時期にまだ打てる手があります。法人で不動産を保有しているなら、修繕費を活用した損金づくりがその代表格です。

修繕費は、払った期に全額損金になる

法人税法のルールでは、建物や設備を「現状維持・原状回復するための支出」は修繕費として扱われ、支出した事業年度に全額損金算入できます。

3月決算の会社が2月や3月中に屋根の防水工事、外壁の補修、設備の修理を行えば、その費用は今期の損金として計上できます。

「減価償却みたいに何年かに分けるの?」とよく聞かれますが、修繕費は違います。払ったその期に、全額落とせます。これが修繕費活用の大きなポイントです。

300万円の工事で、102万円手元に残る

具体的な数字で見てみましょう。

所得が800万円を超える法人の実効税率は、おおよそ34%です。この水準の会社が修繕工事に300万円を使うと、節税効果はこうなります。

300万円 × 34% = 102万円

要するに、実質的な出費は198万円で済む計算です。どうせいつかやらなければならない修繕なら、利益が出ているうちに前倒しでやってしまう。これが「節税できている社長」と「できていない社長」の差の一つです。

節税をうまく活用している社長の多くは、毎年の決算前に「修繕計画」を持っています。保有不動産の状態を日頃から把握して、「今期中にやること」と「来期に回せること」を意識的に切り分けているんです。

「資本的支出」との違いが最大の注意点

ここで必ず押さえてほしいことがあります。

すべての工事が修繕費になるわけではありません。建物の価値を高めたり、使用可能年数を延ばしたりするような支出は「資本的支出」に分類されます。資本的支出は資産計上して減価償却していくことになるため、その年に全額損金にはなりません。

たとえば、破損した屋根の一部を元の状態に戻す補修工事は修繕費になりやすいです。一方、老朽化した設備を新型・高機能のものに全面交換する工事は、資本的支出とみなされる可能性があります。

この境界線は、工事の内容・金額・建物全体への影響などを総合的に判断するため、現場レベルでは判断が難しいこともよくあります。見積もりの段階で顧問税理士に確認するのが鉄則です。「これって修繕費になりますか?」と一言聞くだけで、思わぬ落とし穴を避けられます。

今から動くなら、確認すべき3つのこと

決算前に動くなら、以下を確認してみてください。

まず、保有している不動産で劣化が進んでいる箇所はないか。自社ビルや駐車場、社宅など、日頃からメンテナンスを後回しにしている場所が候補になります。

次に、今期中に工事が完了できるか。工事が終わって請求書が来ていれば未払計上できる場合もありますが、これも顧問税理士に確認が必要です。

最後に、今期の利益の着地見通しです。修繕費を使い過ぎて赤字になっては本末転倒です。利益の規模に合わせて、どこまで実行するかを判断しましょう。

決算前の「ひと手間」が、100万円の差を生む

節税は知っているだけでは意味がなく、動いた人だけが得をします。決算が近づいた今こそ、保有不動産の状態を確認する絶好のタイミングです。

法人で不動産を持っているのに、今期まだ修繕費を一切使っていないなら、いちど建物を見回してみてください。劣化が進んでいる箇所が見つかれば、それは節税のチャンスでもあります。今期中に顧問税理士へ相談を入れてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。