先日、年商3億円ほどの建設業の社長から、こんな相談を受けました。

「役員報酬も上げたし、そろそろ不動産でも買って資産を作ろうと思っているんだけど、個人名義と法人名義、どっちで買えばいい?」

一見シンプルな質問です。ところがこれ、答えによっては7年間で500万円以上の差が生まれる、かなり重要な選択なんです。

個人で買うと、税金が「二重にのしかかる」

個人で不動産を所得として受け取る場合、それは給与所得と合算して課税されます。これを「総合課税」といいます。

たとえば役員報酬が年3,000万円ある社長が、さらに不動産収益を年500万円得たとします。この500万円は「3,500万円の所得がある人の収入」として扱われる、つまり最上位の税率がそのまま適用されてしまうわけです。

住民税と合わせた実効税率は、**43〜55%**に達することも珍しくありません。

手取り計算をすると、500万円の不動産収益が丸ごと残るどころか、税引き後に手元に残るのは220〜285万円程度。半分以上が税金で消えていくイメージです。

法人ならなぜ有利なのか

一方、法人(中小企業)の実効税率は所得規模にもよりますが、おおよそ**23〜34%**の範囲に収まります。

個人との差は15%超。年間500万円の不動産所得があれば、単純計算で年75万円以上の税負担の差が生まれます。

これを7年間続けると、500万円を超える差になります。「社長の給料として毎月10万円アップした」と思えば、そのインパクトがわかると思います。

さらに法人の場合、もう一段節税の余地があります。

不動産収益を役員報酬として複数人に分散したり、法人の事業に関わる経費(管理費・修繕費・借入金利など)を適切に計上することで、課税所得そのものを圧縮できます。家賃収入を法人で受け取り、そこから配偶者や後継者候補への役員報酬として支払う、というスキームは多くの中小企業オーナーが活用しています。

ただし、「法人なら必ず得」ではない

ここで少し立ち止まって考えてほしいのですが、法人化にはランニングコストが発生します。

  • 法人住民税の均等割(年7万円〜)
  • 社会保険料の増加(役員報酬を出す場合)
  • 税理士費用(個人より高くなる傾向)
  • 不動産の名義変更に伴う登録免許税・不動産取得税

これらをトータルで考えると、不動産収益が小さい段階では「法人化のメリットがコストを下回る」ケースも出てきます。一般的には年間の不動産所得が200〜300万円を超えたあたりから、法人化を真剣に検討する価値が出てきます。

「いつ法人化するか」が最大のポイント

相談を受けた社長に私がお伝えしたのは、「買う前に試算する」という一点でした。

不動産を個人名義で取得してから「やっぱり法人に移したい」と思っても、その移転自体に税金がかかります。最初から法人で買えば済んだものが、後からやり直そうとするとコストが膨らむのです。

「そのうち考えよう」が一番高くつく、というのが不動産と法人化の話の核心です。

年間の不動産収益がどのくらいになりそうか、現在の役員報酬との組み合わせで実効税率がどう変わるか、一度試算してみることをおすすめします。

数字を並べてみると、「こんなに差が出るなら早く動いておけばよかった」と感じる社長が多いのも事実です。

今期中に不動産取得を検討しているなら、まず顧問税理士に「個人と法人、どちらが有利か試算してほしい」と一言声をかけてみてください。その一言が、数百万円の差を生む判断につながることがあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。