先日、ある社長からこんな連絡が届きました。
「3年前、あの決断が正解でした。累計でもう1,500万円変わってますよ」
その社長――仮にA社長としておきましょう――は、年商3億円ほどの中堅企業を経営されています。3年前、「会社に利益が残りすぎている。税金ばかり払っている気がする」という悩みを抱えて相談に来られました。
事業が順調なのに、毎期の税負担に頭を抱えている。そういう社長は、実は珍しくありません。
法人に利益が残るほど、税金も増えていく
法人税の実効税率は、中小企業でも課税所得に応じておよそ25〜34%ほどになります。年間で数千万円の利益が出ている会社なら、それだけで毎年何百万円もの税金が消えていく計算です。
A社長の会社も、好調な業績の裏側で「稼いでも稼いでも税金で持っていかれる」という感覚がありました。決算のたびに「もっと手を打てたはずなのに」という後悔が積み重なっていたといいます。
2億円の一棟マンションを、法人名義で買った
相談の中で候補に上がったのが、不動産を法人名義で取得するスキームです。
A社長が選んだのは、地方都市にある一棟マンション。取得価格は2億円で、そのうち建物部分の評価が大きい物件でした。
なぜ建物部分が重要かというと、減価償却の仕組みが絡んでくるからです。建物は時間の経過とともに価値が下がるという考え方から、税務上は取得費用を法定耐用年数にわたって毎年少しずつ経費計上できます。A社長のケースでは、この減価償却費が年間約1,500万円。法人実効税率が約34%ですから、年間約500万円の節税につながりました。
減価償却だけじゃない。関連費用もまるごと経費に
不動産を法人名義で持つと、関連する費用が丸ごと経費として算入できます。
修繕費や設備交換費用、管理委託費、そして融資を活用していれば借入金の支払利息も対象です。A社長は全額自己資金ではなく、一部を金融機関からの融資で賄っていました。その金利負担も毎年経費になっているため、実際の税効果は減価償却だけの計算よりもさらに大きくなっています。
個人名義で同じ物件を所有した場合も経費は使えますが、税率は所得税・住民税の累進課税です。高収入の社長ほど、法人で持つほうが有利な構造になっています。
3年間で変わった金額
3年経って、A社長の会社に残ったお金は累計で約1,500万円。
これは「払わずに済んだ税金」です。法人名義にしていなければ、この1,500万円は税金として消えていたお金が、そのまま会社の中に留まっています。
A社長は「この1,500万円で設備投資の一部を賄えた。資金繰りにも余裕が出た」とおっしゃっていました。節税の効果が、次の成長の原資になっているわけです。
注意点:不動産節税には「落とし穴」もある
ここで正直な話をしておく必要があります。
不動産の法人名義取得は、やり方によっては節税どころか逆効果になる場合があります。
まず物件の選定。空室率が高く賃料収入が安定しない物件では、経費だけが膨らんでキャッシュフローが悪化します。節税にはなっても手元のお金が減っていく、という本末転倒な状況に陥るケースも実際にあります。
また、法人スキームの設計も重要です。既存の事業会社で持つべきか、不動産専用の別法人を設立すべきか。将来の売却時の出口設計、役員報酬とのバランスをどう取るか。これらを誤ると、思わぬ課税リスクを抱えることになります。
「不動産節税」という言葉が一人歩きしているケースを見ることもありますが、肝心なのは自社の状況に合ったスキームを組めているかどうかです。不動産に詳しい税理士との設計が大前提になります。
今期の利益が見えているなら、今が動き時
A社長が「あの決断が正解だった」と言えるのは、3年前に早めに動いたからでもあります。
税金対策は、決算が締まってからでは遅い。利益が確定した後では、打てる手が大きく限られます。今期の見通しが立ってきたタイミングで動き始めることで、選択肢が広がります。
「会社に利益が残りすぎている」「毎年の税金負担が気になっている」という感覚があるなら、一棟マンションの取得が選択肢として合うかどうかも含めて、今のうちから専門家に相談しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。