先日、ある製造業の社長からこんな電話がかかってきました。「自社ビルを建てたんですが、設計費や登記費って全部固定資産に入れるものですか?」決算まで2週間というタイミングでのご連絡。正直、もう少し早く相談してほしかった——というのが本音です。

こうした相談、実は多いんです。自社ビルを建てると、本体工事費のほかに「諸費用」がかなりの金額になります。そしてその処理の仕方を知らないまま、全部まとめて固定資産に入れてしまっている社長が驚くほどたくさんいます。

建設費の5〜8%、3億円なら最大2,400万円が対象になる

自社ビルを建てるとき、本体工事費とは別に次のような費用が発生します。

  • 設計費・監理費
  • 建築確認申請費
  • 地盤調査費
  • 登録免許税
  • 司法書士報酬
  • 不動産取得税

これらの合計は建設費の5〜8%になることが多く、3億円の物件であれば1,500万〜2,400万円にもなります。この金額を「どう処理するか」で、その年の税負担がまったく変わってきます。

「とりあえず全部、建物勘定に入れる」は大間違い

よく聞くのが「どうせ建物に関係する費用だから、全部まとめて固定資産計上しておけばいい」という処理です。一見すると安全そうに見えますが、これは正しくありません。

たとえば「登録免許税」や「不動産取得税」のような税金類は、原則として支払った時点で損金算入できます。建物の取得価額に含める必要はないんです。

3億円の物件であれば、この税金類だけで数百万円になることがあります。それを固定資産に入れてしまうと、何十年もかけて少しずつ減価償却するしかない。当期に落とせる経費を、将来に先送りしているだけです。

設計費・司法書士報酬はどうなるのか

設計費の扱いは少し複雑です。「建物の設計費」は原則として建物の取得価額に含めますが、建設が決定する前の検討段階でかかった費用や、コンサルティング的な性格が強い費用は、別の処理ができるケースがあります。

司法書士報酬も同様で、「登記のための報酬」は取得価額に含めるのが一般的です。ただし、司法書士に支払った登録免許税の実費部分は即時損金が可能です。報酬と実費をまとめて処理している事務所もあるので、請求書の内訳は必ず確認してください。

誤った処理は税務調査でどうなるか

「損金算入できるものを固定資産に入れてしまった」場合、一見すると「慎重な処理」に見えます。でも税務署の目線では、過大な固定資産計上として問題になるケースもゼロではありません。

逆に、「建物に含めるべきものを費用計上した」場合は、否認されて追徴課税のリスクがあります。

結局どちらの方向でも、根拠のない処理は税務調査で説明できなくなります。大事なのは「なぜその処理にしたか」を言語化できる状態にしておくことです。

設計段階から税理士を巻き込む

自社ビルの建設は、社長にとって一生に一度か二度の大きなプロジェクトです。だからこそ、資金調達や融資計画と同じように、税務も初動から設計に組み込んでほしいのです。

おすすめのタイミングは次の3つです。

  • 設計事務所・ゼネコンとの打ち合わせが始まったとき
  • 見積書が出てきたとき
  • 建築確認申請の前後

この時点で「この費用の処理方針はどうしますか?」と確認しておくだけで、数百万円単位の差が出ることがあります。3億円規模の建設プロジェクトで、適切な処理によって1,000万円以上を当期損金にできたケースも珍しくありません。

工事が終わってから税理士に丸投げすると、費用の性質を裏付ける資料が残っていなくて判断できない——という事態が起きます。後からでは取り返しがつかないことも多い話です。

自社ビルの建設を検討中、あるいは計画が動き始めている社長は、今すぐ顧問税理士に「諸費用の処理方針」を確認しておくことをおすすめします。「建てるだけで精一杯」にならず、税務も一緒に設計してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。