先日、ある社長からこんな相談を受けました。「売上も利益も過去最高なのに、自分の手取りが全然増えていない気がする」と。

決算書を確認すると、役員報酬は年2,000万円。ところが所得税・住民税を合わせた実効税率が40%を超えていて、実際の手取りは1,200万円を切っている状態でした。「半分近く税務署に持っていかれている」と知ったとき、その社長の顔が青くなったのを今でも覚えています。

「給与」のまま受け取るのが、実は一番損

高所得者ほど税負担が重くなるのは、累進課税の構造上避けられません。所得税の最高税率は45%、そこに住民税10%が乗ると、1,000万円を超えた部分の税率は実質55%に達することもあります。

稼いだ2円のうち1円以上を税金で持っていかれる——それが年収2,000万円の社長の現実です。この状況を変えるために使えるのが、「役員社宅コンボ」と呼ばれる手法です。

仕組みはシンプル。法人で買って、社長が住む

役員社宅コンボの骨格は2行で説明できます。法人が不動産を取得し、社長がその物件を社宅として利用する——これだけです。

ここで二つの効果が同時に生まれます。一つ目は、法人が支払う家賃・ローン・減価償却・管理費などを法人の経費として計上できること。二つ目は、社長が役員報酬として受け取っていた「住居費相当分」を圧縮できること。

役員報酬が下がれば、社長個人の課税所得が減ります。法人側では経費が増えて法人税の負担も軽くなる。この二段構えが「コンボ」と呼ばれるゆえんです。

年500万円節税・手取り+18%の試算

具体的にどれくらいの効果があるのか、一例を見てみましょう。

役員報酬2,000万円の社長が、月額家賃30万円(年360万円相当)の物件を法人名義で取得するケースを想定します。法人が不動産の減価償却を計上しつつ、社長の役員報酬をその分圧縮すると、個人の課税所得が大きく下がります。

試算では、トータルの節税効果が年間500万円前後になるケースも十分にあり得ます。手取り額の改善率で換算すると+18%前後——つまり今まで税務署に消えていたお金の一部が、合法的に手元に残るようになるわけです。

「賃料相当額」の自己負担が最大の落とし穴

ここで油断してはいけません。役員社宅は設計を誤ると、税務調査で「現物給与として課税すべき」と判断されて全額否認されるリスクがあります。

法人税基本通達には、賃料相当額の計算方法が定められています。社長が会社に対して「一定額以上の自己負担」を払っていない場合、その差額が給与とみなされます。つまり、社長が何も払わずに法人所有の豪邸に住んでいる、という状態は税務上アウトになります。

逆に言えば、この自己負担ラインを正しく設定するだけで、節税効果を最大化しながらリスクをほぼゼロに抑えられます。ここが専門家の腕の見せどころです。

また、物件を購入するのか賃貸の転貸にするのか、法人の資金繰りや融資計画との整合性はどうかといった点も、総合的に検討が必要です。「とにかく法人で不動産を買えばいい」という単純な話ではありません。

役員報酬が年1,500万円を超えたら、検討を始めるタイミング

役員社宅コンボは、役員報酬が高くなるほど効果が大きくなります。目安として年収1,500万円を超えてきた社長は、一度試算してみる価値があります。

事業が軌道に乗ってきたタイミングほど、税負担の重さを実感するものです。しかし、それを「仕方がないもの」と諦める必要はありません。税法の範囲内で合法的に手取りを増やす手段は、まだまだ残っています。

まず顧問税理士に「役員社宅の活用を検討したい」と一声かけてみてください。その一言が、年間500万円の差を生み出すきっかけになるかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。