先日、決算期が近づいてきた社長からこんな一言をもらいました。「毎年これだけ利益が出るなら、不動産でも買ったほうがいいのかな」と。

漠然としたイメージで語られることの多い「法人で不動産を買う節税」ですが、実際にどこで経費が生まれるのかを理解している社長は意外と少ないです。今日は、具体的な数字と一緒に整理してみます。

法人で不動産を買うと、なぜ経費が増えるのか

個人でも不動産を持てますが、法人名義にすることで「費用として認められる幅」がぐっと広がります。

大きく分けると、発生する経費は3種類。それぞれどのくらいの規模感なのか、見ていきましょう。

3位:固定資産税と保険料(年50〜100万円)

不動産を持てば、毎年固定資産税がかかります。さらに火災保険・地震保険などの損害保険料も必要です。

法人名義なら、これらは全額「事業経費」として計上できます。1億円規模の物件なら、固定資産税だけで年40〜70万円、保険料を合わせると年50〜100万円の支出がそのまま費用になる計算です。

個人でも不動産所得の経費には算入できますが、法人の場合は事業利益と直接相殺できるため、節税効果がより直接的に現れます。

2位:借入利息(年200万円)

不動産を現金一括で買う社長は多くありません。多くの場合、金融機関の融資を活用します。そこで経費になるのが、毎月の返済のうち「利息部分」です。

1億円の融資を金利2%で借りれば、年間の利息は約200万円。この200万円が、まるごと法人の経費として計上されます。

元本の返済は経費になりませんが、利息は「資金調達コスト」として費用に算入できます。個人の住宅ローン控除とは仕組みが異なり、法人では利益から直接差し引けるため、効果が大きく出るのが特徴です。

1位:減価償却費(年333万円〜)

これが最も大きなインパクトです。

不動産の建物部分は「時間とともに価値が減る」という考え方から、毎年一定額を経費として計上できます。これが減価償却です。土地は対象外ですが、建物は構造や用途によって耐用年数が定められています。木造なら22年、RC造なら47年が法定耐用年数の目安です。

仮に建物部分が1億円、耐用年数30年の物件なら、毎年333万円を費用として計上できます。実際に現金が出ていくわけではないのに、帳簿上は333万円の経費が生まれる。これが減価償却の強みです。

「キャッシュは出ていかないのに、税金が減らせる」という構造が、法人不動産が節税策として注目される最大の理由です。

3つを合計すると、年500万円超も現実的

ここまでの数字を整理するとこうなります。

  • 固定資産税・保険料:年50〜100万円
  • 借入利息:年200万円(1億円・金利2%の場合)
  • 減価償却費:年333万円(建物1億円・耐用年数30年の場合)

合計で年間580〜630万円ほどの経費が生まれる計算です。法人の実効税率を約30%とすれば、節税効果は年間150〜190万円。10年続ければ、累計で1,500〜1,900万円の税負担軽減になります。

「節税になる」だけでは判断しないでほしい

ただし、「不動産さえ買えば節税になる」という単純な話ではありません。

まず、物件の収益性が大前提です。節税だけを目的にすると、空室リスクや修繕費で実質的に損をするケースも出てきます。また、法人での融資審査は個人より厳しくなることがあり、決算書の内容や自己資本比率が問われます。

さらに将来、物件を売却するときは法人税の課税対象になります。個人の長期保有なら分離課税で約20%ですが、法人では実効税率30%前後が適用されるケースが多く、出口戦略まで含めて設計しておく必要があります。

今期の利益が多い社長ほど、早めに動く価値がある

決算が近づいてから慌てて動いても、不動産の購入手続きは間に合いません。法人不動産は、計画的に動いてこそ効果が最大化されます。

今期の利益が大きそうなら、早めに税理士や不動産の専門家に相談して、購入シミュレーションをしておくのがおすすめです。「節税のために買う」ではなく「収益が立つ物件を、法人名義で持つ」という順番で考えると、判断がブレにくくなります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。