「法人で不動産を持ったら節税になると聞くんですが、具体的に何が経費になるのかよくわからなくて…」

先日、自社ビルを取得したばかりの卸売業の社長からこんな言葉を聞きました。税理士からも「色々使えますよ」とは言われているが、何がどのくらい節税につながるのかを整理できていない、というケースでした。

今回は、法人不動産で使える節税経費をTOP5形式で整理します。全部使いこなせれば、年間500万円超の節税も現実的に見えてきます。

第5位:修繕費・リフォーム費用

建物のメンテナンスにかかる費用は、基本的に「修繕費」として一括経費計上できます。外壁の塗り替え、室内の原状回復、設備の交換などが対象です。

ただし注意点があります。建物の価値を高める「資本的支出」に該当する場合は、一括経費にならず減価償却が必要になります。「修繕か、資本的支出か」の線引きは税務調査でもよく争点になるポイントです。金額が大きい工事は事前に税理士に確認しておくのが無難です。

第4位:固定資産税・管理費・損害保険料

不動産を保有する上で発生する「維持コスト」全般も、法人経費として計上できます。固定資産税・都市計画税、管理委託費、火災・地震保険の保険料などがその代表です。

「当たり前では?」と思うかもしれませんが、個人保有の場合は確定申告での不動産所得から引くだけ。法人保有なら法人税の課税所得から直接引けるため、実効税率分だけ効果が出ます。地味ですが、積み重なると侮れない金額になります。

第3位:減価償却費

不動産節税の代名詞とも言えるのがこれです。建物部分を法定耐用年数に沿って毎年経費として計上できます。木造なら22年、RC(鉄筋コンクリート)なら47年で按分します。

たとえば取得価額2,000万円の木造建物なら、年間約90万円以上を減価償却費として計上できます。実際には現金が出ていかない「帳簿上の経費」なので、キャッシュは手元に残りながら課税所得だけを下げられる。これが法人不動産節税の根本的な仕組みです。帳簿が赤字でも、財布の中は痛まないというのが最大の特徴です。

第2位:支払利息

不動産購入のために銀行借入をしている場合、その利息がまるごと経費になります。1億円の借入で年利2%なら年間200万円の利息が経費として落とせ、実効税率34%で計算すると約68万円の節税効果です。

「借入があるのに節税になるの?」と感じる方もいますが、ここが法人不動産の面白いところです。借入金の返済元本は経費になりませんが、利息部分は全額経費。借入期間が長いうちは特に効果が大きく、物件規模が大きいほど恩恵も増えます。

第1位:役員社宅(法人借上社宅)

9割の社長が使いきれていない、というのがこれです。法人が物件を借りて、社長(役員)に低額で転貸する「役員社宅」スキームです。知っている方でも、まだ設定していないケースが非常に多い。

仕組みはシンプルです。法人が家賃30万円の物件を借り、社長から徴収する家賃を「国税庁通達に基づいた最低額」に設定します。この金額は実際の家賃の15〜50%程度が目安で、残りの50〜85%が法人の経費になります。

月30万円の物件なら、法人が経費に算入できる部分は月12〜25万円。年間で計算すると144〜300万円が追加で経費計上できる計算です。社長個人としても、高い家賃を給与から払う必要がなくなるため、実質的な手取りが増える感覚になります。

役員社宅は適切に運用すれば否認リスクが低い節税策です。ただし自宅として使う場合と業務利用の場合で計算が変わるため、セッティングは専門家に任せましょう。

5つ全部使えば、年500万円超も現実的

これら5つを組み合わせた場合の節税効果の目安は次のとおりです。

  • 減価償却費:年間30〜100万円
  • 支払利息の経費化:年間50〜100万円
  • 修繕費・管理費・保険料:年間20〜50万円
  • 固定資産税等:年間10〜30万円
  • 役員社宅スキーム:年間100〜300万円

物件の規模や借入額によって幅はありますが、複数を組み合わせると年間300〜500万円以上の節税効果が出てくることも珍しくありません。

重要なのは、決算直前に慌てて動くのではなく、物件取得や借入の段階から全体を設計しておくことです。特に役員社宅は「設定するだけ」で即効性があります。まだ使っていない社長は、今期の決算前に一度、税理士にこのリストを持って相談してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。