先日、年商3億円ほどの建設業の社長から、こんな連絡が届きました。

「税務調査が終わったんですが、不動産関係の経費を4割近く否認されまして……追徴税額がかなりの額になってしまいました」

話を詳しく聞いていくと、特別に悪いことをしていたわけではありませんでした。むしろ「普通にやっていた」つもりの処理が、税務署の目線では認められないものだったのです。

不動産を複数所有し、会社の経費として計上している社長は少なくありません。ただ、計上の仕方によっては、税務調査のときに大きなダメージを受けることがあります。今日は、実際によく問題になる3つのポイントをお伝えします。

1. 修繕費か資本的支出か——区分ひとつで追徴が発生する

よく起きるのが、内装改修や設備交換を「修繕費」として一括で経費計上しているケースです。

修繕費なら全額その年の経費になります。ただし、税務署が「これは建物の価値を高める工事だ」と判断すると、一括計上は認められません。「資本的支出」として減価償却しなければならないものになり、経費計上の差額が丸ごと追徴対象になります。

たとえば500万円の内装リフォームを全額費用計上していたとして、それが資本的支出と判断されると、何十年かに分けて償却すべきものとみなされます。その差額がすべて否認され、法人税や所得税が追加されるわけです。

原状回復に必要な工事なら修繕費、建物の機能や耐久性を向上させる工事なら資本的支出、というのが基本的な考え方です。ただし判断は工事内容によって異なるため、着工前に税理士に確認しておくのが確実です。

2. 自宅兼事務所の按分比率——書類がないと全額否認されることも

社長の自宅を会社の事務所としても使っている場合、家賃や光熱費の一部を会社の経費にしているケースがよくあります。

この処理自体は適法です。問題になるのは「按分の根拠を説明できるか」という点です。

たとえば「業務使用の床面積が全体の30%」として経費計上しているなら、その根拠を間取り図や利用記録で説明できなければなりません。税務調査では「なぜその割合なのか」を必ず問われます。答えられなければ、業務使用の実態がないとみなされ、全額否認というケースもあります。

按分の計算根拠を書面で残し、実際に業務スペースとして使っている事実を日頃から整理しておくことが重要です。「なんとなく3割にしていた」は通用しません。

3. 実態のない管理料・業務委託費——家族への支払いは特に狙われる

不動産の管理を家族や関係会社に委託し、管理料を支払っているケースも、税務調査で頻繁に問題になります。適切に運用していれば問題ない処理ですが、「実態があるか」を厳しく見られます。

契約書があるか、実際にどんな業務をこなしているか、支払いの記録が残っているか——これらがセットで揃っていないと、全額否認の対象になります。

さらに深刻なのは、税務署が「実態なし」と判断したうえで「悪質な仮装・隠蔽があった」とみなすと、重加算税が課されることです。通常の過少申告加算税が10〜15%なのに対し、重加算税は35%。追徴額が大きく膨らみます。家族への業務委託が形式だけになっていないか、今一度確認してみてください。

今すぐ確認したいチェックポイント

3つのリスクを踏まえて、自社の状況を整理するなら、まず以下の点から始めるとよいでしょう。

  • 過去3年の修繕費・改修費に、資本的支出に該当するものが混じっていないか
  • 自宅兼事務所の按分比率の根拠を書面で説明できるか
  • 管理委託先との契約書・業務内容・支払い記録が三点セットで揃っているか

不動産経費の否認は、金額が大きくなりやすいことと、重加算税のリスクがあることで、税務調査の中でも特にダメージが大きくなりがちです。

「やっていることは正しいはず」と思っていても、記録や書類の不備で否認されることは珍しくありません。今期の決算前に、税理士と一度、経費の計上内容を棚卸ししておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。