先日、知り合いの社長からLINEが届きました。「今期はたまたま利益が出てしまって、税理士から『何か手を打っておいたほうがいい』と言われたんだけど、もう間に合う?」という内容でした。
3月決算の社長なら、今まさにこの感覚を持っている方が多いのではないでしょうか。決算日まで残り数週間。ここで動けるかどうかが、今期の税額を大きく左右します。
今回は、3月決算の法人が「今月中に動けば」使える不動産絡みの節税手法を3つご紹介します。いずれも合法的な手法ですが、要件の確認は欠かせないので、最後まで読んでから税理士に相談してみてください。
築古木造物件を買えば、2,000万円が4年で全額経費になる
まず1つ目は、法定耐用年数を超えた木造物件を活用した短期償却です。
木造建物の法定耐用年数は22年ですが、これを超えた築古物件は「耐用年数 × 20%」という計算式で償却期間が決まります。つまり最短で4年、2,000万円の物件なら年間500万円を経費として計上できる計算になります。
実効税率が34%の法人であれば、500万円 × 34% = 約170万円の節税効果。4年間継続すれば、累計で680万円近い税負担の軽減になります。
ただし、これが使えるのは「3月中に取得・引渡しが完了した物件」に限られます。4月1日になってしまうと今期ではなく来期の話になるため、動くなら今月中です。
物件選びのポイントは、建物比率が高いこと。土地は償却の対象にならないので、土地値が大半を占める都心物件では効果が薄くなります。地方の築古物件に目を向けるのも一手です。
法人が物件を持って社宅にすれば、家賃の大部分が法人経費になる
2つ目は、法人が不動産を購入して役員社宅として活用する手法です。
仕組みはシンプルです。法人が物件を取得し、それを役員(社長自身)に社宅として貸し出します。役員は国税庁の通達に定められた計算式で算出した「賃貸料相当額」だけを会社に支払えばよく、残りの費用は全額法人の経費になります。
この賃貸料相当額が味噌で、実際の市場家賃と比べると相当低い金額になるケースがほとんどです。たとえば月30万円相当の物件でも、計算上の賃貸料相当額が月5〜6万円程度になることも珍しくありません。
差額の24万円は毎月法人の経費として積み上がり、年間では288万円の経費増加になります。役員個人としても実質的に安く住めるので、法人・個人の両面でメリットのある設計です。
すでに社長が個人で賃借している物件を法人で取得し直して社宅化する方法も有効です。取得後に社宅として供用開始できれば、今期中の節税に間に合います。
3月31日までに着工さえすれば、修繕費は全額今期の損金になる
3つ目は少し毛色が違いますが、期末の修繕費を一括で損金算入する手法です。
保有物件の修繕工事を今月中に着工・支出すれば、その費用を全額当期の損金として計上できます。同じ工事でも来期に先送りにすれば来期の経費になるだけですが、利益が出ている今期に集中させることで節税効果が生まれるわけです。
注意点は「修繕費」と「資本的支出」の区別です。既存の機能を維持・回復するための工事は修繕費として一括計上できますが、建物の価値を高めたり機能を追加したりする工事は資本的支出として減価償却の対象になります。
外壁塗装は通常は修繕費に該当しますが、断熱材の追加や間取り変更を伴うと資本的支出と判断される可能性があります。工事の設計段階から税務上の扱いを意識しておかないと、想定していた節税効果が得られないケースもあります。
3手法の組み合わせが効果を最大化する
今回ご紹介した3つの手法は、組み合わせることで効果が最大化されます。
築古木造物件を取得して役員社宅にし、さらに取得後に必要な修繕工事を今期中に実施すれば、1つの物件で複数の節税効果を同時に得られます。物件・社宅・修繕の三重奏です。
ただし、物件ごとに耐用年数の確認・社宅の賃貸料算定・修繕費の判断が必要なため、個別の事情に応じた税理士の判断が欠かせません。「一般論としてはOKでも、この物件では使えない」というケースは珍しくありません。
3月決算の社長は、残り数週間で動ける案件を今すぐ税理士に持ち込むことをおすすめします。決算が終わってから「あの手法を使えばよかった」と悔やんでも、もう手の打ちようがありません。今期の利益が見えてきた今こそ、動き時です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。