先日、年商5億円の製造業を営む社長から、こんなメッセージが届きました。「不動産を2棟持っているんですが、節税できることって今からでもありますか?」決算は3月末、申告期限まであと数週間というタイミングでした。

結論から言うと、まだ間に合います。ただし、今月中に動くことが条件です。

3月決算法人の申告期限は5月末。この期限を超えると、今期の経費処理は基本的にやり直しがきかなくなります。節税の機会は、期限とともに静かに消えていくのです。


税務署が教えてくれない「計上漏れ」の現実

法人で不動産を持っている社長の多くが、毎年数十万円——多い場合は100万円以上——を余分に払っています。

その原因の多くは「計上漏れ」と「区分ミス」です。

減価償却費は法定の計算式があるので大きな漏れは起きにくいのですが、問題はその周辺にあります。修繕工事の会計処理、社宅として使っている物件の賃料設定、古くなった設備の除却処理——これらはルールが複雑で、気づかないうちに誤った処理が続いていることがあります。

顧問税理士がいても、「例年と同じで大丈夫だろう」という前提のまま申告が進んでしまうことがある。そこに盲点があります。


申告前に確認したい3つのポイント

不動産を持つ法人が、申告書を提出する前に見直すべき項目は主に3つです。

① 役員社宅の賃料設定

社長が自宅を法人で借り上げる「役員社宅」の仕組みを活用している場合、社長が法人に支払う適正賃料の計算が正しいかどうかを確認してください。

この計算は固定資産税評価額をベースにした税法上の算式で決まります。新しく物件を取得した期や、評価替えがあった年は特に要チェックです。設定を誤ると、本来経費にできるはずの差額が丸ごと損になります。

② 修繕費と資本的支出の区別

建物の修繕やリフォームをした場合、その工事が「修繕費」(当期に全額経費計上)なのか「資本的支出」(耐用年数にわたって減価償却)なのかで、今期の税負担が大きく変わります。

判断の基準は「原状回復か、価値・機能の向上か」です。ただし実務では境目があいまいなケースも多い。20万円未満であれば修繕費として処理できるルールもあります。昨年度に何かリフォームや修繕をした場合は、区分が正しいかどうかを確認する価値があります。

③ 除却損の計上

使われなくなった設備や内装、撤去した建物の一部が、帳簿上にそのまま残っていませんか?

実際には存在しないのに帳簿に残り続けている資産——これを「除却処理」することで、まとまった損失を今期に計上できます。数年前にリフォームをして古い内装を撤去したが、帳簿上はまだ残っている……というケースが、実は珍しくありません。


数字で見ると、100万円の差がリアルになる

具体的に試算してみましょう。

年間300万円の不動産関連経費(修繕費・社宅賃料差額・除却損など)を適切に計上できたとします。課税所得が800万円を超える法人の実効税率は概ね34%前後です。

300万円 × 34% ≒ 約100万円の節税効果

もちろん、どの会社でもこの数字が出るわけではありません。しかし「一度も見直したことがない」「例年通りで処理している」という場合は、確認する価値は十分にあります。


5月末を過ぎたら、取り戻せない

ここが一番伝えたいことです。

修繕費の区分見直しや除却損の計上は、申告書を提出する前であれば今からでも対応できます。しかし5月末の申告期限を超えた瞬間に、今期の節税チャンスは永遠に消えます。

来期に持ち越すことはできませんし、「後から申告書を修正して経費を増やす」という手は、原則として認められません。

顧問税理士に「不動産の処理、一度見直してもらえますか」と一声かけるだけでいい。決算書を確認しながら、計上漏れがないかをチェックしてもらう時間は、まだあります。


3月決算の法人で、不動産や役員社宅をお持ちの社長は、今週中に顧問税理士に確認することをおすすめします。「特に問題ない」という答えが返ってきたとしても、それはそれで大切な安心材料になります。動いて損はありません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。