先日、3月決算の製造業を営む社長から、こんな連絡が来ました。

「税理士から決算の数字が出てきたんだけど、思ったより税金が多くて……。もう何もできないですかね?」

結論から言うと、3月31日をまたぐ前であれば、まだ手が打てます。ただし、タイムリミットは決算日そのもの。「申告書を出してから気づいた」では取り返しがつかない手法が、不動産絡みには複数あります。

ここでは、3月決算の法人が見落としがちな不動産節税の手法を5つ整理します。

役員社宅で賃料を丸ごと法人経費に

役員が個人で家賃を払っているなら、今すぐ法人名義に切り替えることを検討してください。法人が物件を借り上げ、役員に「社宅」として貸し出す形にすると、賃料の大部分を法人の経費として計上できます。

役員個人が負担すべき「賃貸料相当額」は税法上の計算式で算出されますが、実際の家賃の10〜20%程度になるケースが多く、残りは全額法人の損金になります。月15万円の家賃なら、年間で100万円超が経費化できる計算です。

3月末までに修繕を実施して当期に計上する

「いずれ直さないといけない」と先送りしている修繕があるなら、3月31日までに着手するだけで話が変わります。修繕費は、発生した期に経費として計上できるからです。

注意点は「資本的支出」との区別です。建物の機能を新たに追加したり、価値を著しく高める工事は資産計上が必要で、減価償却を通じて少しずつしか経費化できません。原状回復や維持管理目的の修繕であれば、支出した期に一括計上できます。

この判断が曖昧なまま処理すると、税務調査で指摘されるリスクがあります。事前に税理士と内容を確認しておくことが大切です。

中古物件は「簡便法」で減価償却を一気に加速させる

新築より中古物件のほうが、減価償却の観点では有利なことがあります。簡便法という計算方式を使うと、耐用年数を短く設定でき、1年あたりの償却費が大きくなるからです。

たとえば、築25年の木造建物(法定耐用年数22年)を取得した場合、簡便法では耐用年数が4年と計算されます。4年で取得価額の大半を償却できるため、節税効果が初期に集中します。

「まとまった設備投資をした期に利益が出た」という状況では、中古物件の取得と組み合わせると効果的です。

不動産管理費は法人でまとめて経費計上する

管理会社への委託料、火災保険料、固定資産税……。不動産にまつわる費用は意外と幅広くあります。これらをきちんと法人口座から支払い、法人の経費として処理できているかを確認してください。

個人名義の口座から支払っていると、法人の経費として認められない可能性があります。3月末までに未払費用として計上できるものがないか、一度領収書を整理してみることをおすすめします。

借入金の利息は全額経費になる

不動産購入のために借り入れをしている場合、その利息は全額、法人の損金として計上できます。「利息だから少額だろう」と思いがちですが、残高が多ければ年間で数十万円になることもあります。

見落としやすいのが、融資の付随費用や保証料の按分計上です。借入時に一括払いした費用も、期間按分して毎期経費化できる場合があります。金融機関から出てくる返済予定表と帳簿が一致しているか、この機会に確認しておきましょう。


法人税率は、所得が800万円を超えると約34%に上がります。100万円の経費を正しく計上できれば、それだけで34万円の税負担が減る計算です。5つの手法を組み合わせれば、合計100万円超の経費増は十分に現実的な話です。

3月決算の申告期限は5月末。「もう何もできない」と諦める前に、一度、不動産絡みの経費を洗い直してみてください。今期の数字がまだ確定していないなら、動ける余地があるかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。