先日、年商7000万円の建設業を営む社長から、こんな相談を受けました。「個人で不動産を買おうとしたら、銀行の態度が冷たくて。でも会社名義だと話が変わるって聞いたんですが、本当ですか?」
はい、本当です。法人と個人では、銀行の見る目がまったく違います。そしてこの違いを知っているかどうかで、手元に残る資産の額が大きく変わってきます。
法人融資は「別世界」のルールで動いている
個人で不動産融資を申し込むと、銀行は年収や勤続年数をベースに審査します。一方、法人の場合は決算書の「稼ぐ力」と「返済能力」で評価されます。
黒字3期連続・年商5000万円以上という条件を満たしている法人なら、5000万円規模の融資も十分に現実的です。しかも、個人より有利な金利条件で通ることも珍しくありません。
銀行側からすれば、法人は「継続的に利益を出している事業体」として信頼できる借り手なのです。
自己資金1000万円で5000万円の物件を取得できる
具体的な数字で考えてみましょう。
自己資金1000万円を頭金に、残り4000万円を融資で調達すれば、5000万円の収益物件を取得できます。レバレッジ比率は5倍。個人だとここまでの比率が通ることは少ないですが、法人名義なら銀行も応じやすいのです。
そして法人で不動産を持つ最大のメリットが節税効果です。ローンの金利・固定資産税・管理費はもちろん、減価償却費も法人の経費として計上できます。実効税率が約34%の法人なら、その分だけ税金が減り、手残りキャッシュが増えます。
物件によっては、家賃収入が入りながら帳簿上は「赤字」になり、法人税をゼロに近づけられるケースもあります。
ただし、ここに落とし穴がある
節税を意識しすぎて役員報酬を高く設定すると、決算書の利益が薄くなります。
銀行は融資審査のとき、「この会社はちゃんと利益を出しているか」を真っ先に確認します。役員報酬で利益をほぼゼロにしてしまうと、「返済能力が不明」とみなされ、融資の条件が悪化したり、そもそも通らなかったりします。
節税と融資枠の確保は、一見相反するように見えます。しかし、適切なバランスを設計することはできます。大事なのは「どちらかを諦める」のではなく、両立できる最適ラインを見つけることです。
銀行の窓口では教えてもらえない理由
銀行の担当者は、必ずしもあなたの会社の節税まで考えてはくれません。「融資できるかどうか」だけを判断する立場です。
「法人名義だと有利ですよ」「このくらいの決算書なら5000万いけますよ」とは、まず教えてくれない。銀行との交渉は、事前に自社の強みを整理し、適切なタイミングと担当者を選んで臨む必要があります。
この「準備」の部分こそ、顧問税理士と一緒に進める価値があります。決算書がどう読まれるかを把握した上で、融資申請に最適な財務状況を作っておくのが、賢い社長の動き方です。
もし「うちは融資なんて無理だろう」と思い込んでいるなら、一度、今の決算書を持って専門家に相談してみてください。黒字3期・年商5000万以上の法人なら、まだ使えていない融資枠が眠っている可能性は十分あります。今期の決算が出る前に動き始めることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。