先日、年収2,400万円の社長からこんな相談を受けました。「毎月の所得税が高すぎて、思ったより手元にお金が残らない」というのです。

計算してみると、所得税と住民税を合わせた実効税率が50%近くに達していました。稼いだお金の半分近くが税金として消えている状態です。「現金でもらい続けることを疑ったことはありましたか?」と聞くと、「そんな方法があるとは考えもしなかった」という答えが返ってきました。

役員社宅という選択肢

役員報酬は、現金だけで受け取る必要はありません。法人が不動産を購入または賃借し、社長に「社宅」として提供する方法があります。これを現物給与(現物支給)と呼びます。

仕組みはシンプルです。社長が法人に支払う賃料は、国税庁が定めた計算式によって算出されます。この計算式で出てくる金額は、市場の家賃よりかなり低くなるのが一般的です。

たとえば、市場賃料が月30万円の物件でも、役員が法人に払う負担額が月5万円になるケースは珍しくありません。差額の25万円分は「給与として課税されない」扱いになります。

実際どれくらい変わるのか

所得税の最高税率45%が適用される社長の場合、課税される給与が年300万円圧縮されれば、所得税だけで135万円の節税になります。住民税(10%)も加えると、手取りの差は年150万円を超えることもあります。

さらに、法人側にも恩恵があります。不動産を法人名義で購入すれば、減価償却費・管理費・固定資産税などを法人の経費として計上できます。「個人の課税圧縮」と「法人の経費増加」が同時に働く、二重構造の節税スキームです。

この積み重ねが年間300万円単位の差を生む社長も実際に存在します。物件の規模や取得方法によって効果は変わりますが、ポテンシャルは決して小さくありません。

やり方の基本ポイント

具体的には、法人が物件を用意(購入でも賃借でも可)し、役員と法人の間で賃貸借契約を締結します。役員は法人に一定の賃料を支払い、残りの住居費は現物給与として提供される形です。

賃料の計算には、国税庁が定めた算式を使います。小規模住宅・一般住宅・豪華社宅で異なる3種類があり、この金額を下回る設定をすると「経済的利益」として給与課税されてしまいます。計算を正確に行うことが大前提です。

注意したい落とし穴

節税効果は大きいですが、気をつけるべき点もいくつかあります。

床面積が240㎡を超えるような豪華社宅には別の計算が適用され、節税効果が大幅に薄くなります。また、法人で不動産を購入する際は資金繰りの確認も欠かせません。節税になるからといって無理な借入をすれば、キャッシュフローを圧迫するリスクがあります。

自宅を後から法人に売却して社宅化する手法も存在しますが、売買価格の設定が難しく、税務調査のリスクも伴います。これは専門家なしに手を出しにくい領域ですので、必ず税理士と相談してから動くべきです。

今の役員報酬設計を見直す価値がある

高所得の社長ほど、現金給与一辺倒の設計が税負担を大きくしています。役員社宅スキームは制度として認められた合法的な手法であり、適切に設計すれば長期的に大きな差が生まれます。

まだ現物支給を活用していないなら、今期の決算前に一度シミュレーションしてみてください。自宅を社宅にするか、新たに物件を取得するかは会社の状況によって変わりますが、選択肢を知らずに高い税金を払い続けるのはもったいないことです。給与の「受け取り方」を変えるだけで、手元に残るお金は大きく変わります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。