先日、都内で製造業を営む社長からこんな相談を受けました。\n\n「毎年これだけ稼いでいるのに、手元に残るお金がぜんぜん増えない。どこかに穴が空いているんだろうか」と。\n\n決算書を一緒に眺めてみると、問題はすぐに見えました。役員報酬が年間3,000万円。個人の税負担と社会保険料だけで毎年1,000万円以上が消えていたのです。\n\n## 税務署が積極的には教えてくれない、二重節税の設計図\n\n役員報酬を高く設定することが「会社のお金を自分に移す」唯一の方法だと思っている社長は意外と多いです。でも実は、役員報酬を”戦略的に下げる”ことが、トータルの手残りを増やすカギになるケースがあります。\n\n仕組みをひと言で言えば、「個人に高い税率でかかっているお金を、法人に残してから使う」という発想の転換です。\n\n個人の所得税は累進課税なので、報酬が高いほど税率が上がります。年収3,000万円の社長なら、増えた100万円のうち55万円近くが税と社会保険料で消えてしまう計算です。一方、法人の実効税率は概ね25〜35%程度。同じ100万円を法人で使えば、手残りは個人よりはるかに厚くなります。\n\n## 役員報酬を下げると何が変わるのか\n\nたとえば年間役員報酬を3,000万円から2,400万円に600万円引き下げたとします。\n\nまず個人側では所得税と住民税が減り、さらに健康保険・厚生年金の社会保険料も連動して下がります。社会保険料は会社と個人の折半なので、法人側の負担も同時に軽くなる。これだけで年間70〜100万円規模のコスト削減になることも珍しくありません。\n\nそして法人に残った600万円。これをそのままプールしておくだけでは法人税がかかります。ここで登場するのが不動産投資です。\n\n## 法人で不動産を持つと「もう一枚」節税カードが加わる\n\n法人が表面利回り5%前後の収益不動産を取得すると、建物部分の減価償却費が毎年の経費として計上できます。たとえば建物評価4,000万円の物件なら、法定耐用年数に応じて毎年100〜200万円超の経費が発生する計算です。\n\nこの減価償却費が法人の課税所得を圧縮するため、法人税もあわせて削れる。役員報酬の引き下げで個人課税を減らしながら、法人側でも経費を積み上げる。この二段構えが「二重節税」と呼ばれる所以です。\n\n条件がそろえば、両方の効果を合算して年間200万円規模の節税になるケースも出てきます。\n\n## ただし、この設計には前提条件がある\n\n当然ながら、誰でも同じ効果が得られるわけではありません。注意点を正直に言います。\n\nひとつは役員報酬の変更タイミング。原則として事業年度開始後3ヶ月以内にしか変更できないため、今期から動こうと思うなら早めの判断が必要です。\n\nもうひとつは不動産のキャッシュフロー。節税目的だけで利回りの低い物件を掴むと、修繕費や空室で手元資金が逆に痛む。節税効果と実質利回りのバランスを冷静に見る視点が欠かせません。\n\nそして社会保険料の削減は、将来の年金受給額にも影響します。今の節税と将来の受取額、どちらを優先するかは社長自身のライフプランと切り離せない話です。\n\n## 「毎年何百万も払い続ける」を変える、最初の一歩\n\n大事なのは、役員報酬と不動産を「別々のもの」として考えないことです。個人側の税負担・法人側の利益・不動産の収支を一枚の表に並べて、全体最適で設計する。これが税務コストを本当に下げていく考え方です。\n\n今の役員報酬の金額、最後に見直したのはいつですか?設定したままで何年も放置しているなら、一度シミュレーションしてみる価値は十分にあります。顧問税理士に「役員報酬と不動産を組み合わせた節税設計を試算してほしい」と声をかけてみるのが、最初の具体的なアクションです。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。
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