先日、都内で不動産を数棟持つ社長からこんな相談を受けました。
「毎年、税理士に任せてるから大丈夫だと思ってたんですけど……先生、これって本当に全部経費になってます?」
見せてもらった申告書を確認すると、修繕費や管理費はきちんと計上されている。でも、いくつかの項目がごっそり抜けていたんです。その金額、合計すると年間で200万円近く。「これ、ずっと損してたってことですか」と青ざめていたのが印象に残っています。
賃貸経営における経費の話は「なんとなくわかってる」という社長が多いのですが、実際にすべての項目を正確に把握できているケースは意外と少ないものです。今回はその「見落とし」になりやすい7項目を中心に、整理してお伝えしていきます。
現金が出ないのに「損失」になる、最強の経費
まず、多くの社長が感覚的に理解しづらいのが減価償却費です。
建物は時間とともに価値が下がっていく、という考え方に基づいて、購入価格を耐用年数にわたって毎年経費として計上できます。ポイントは「現金は一切出ていない」という点。にもかかわらず、帳簿上は毎年きちんと損失として計上できるのです。
木造アパートであれば耐用年数は22年、RC造なら47年が基準になります。たとえば3,000万円の木造アパートであれば、単純計算で年間約136万円が減価償却費として経費に落とせることになります。現金支出ゼロで年間100万円超の経費。これだけでも、法人税への影響は相当なものです。
「修繕費は経費にしてる。でも減価償却ってよくわからないから税理士に任せてる」という社長、ぜひ一度、申告書で金額を確認してみてください。
「当たり前」と思って見落とす6つの経費
減価償却費に加えて、以下の6項目も賃貸経営においてすべて経費計上が可能です。
- 管理費:管理会社へ支払う委託料
- 固定資産税:毎年課税される土地・建物への税金
- 火災保険料:長期契約の場合は按分が必要なケースも
- ローン利息:元本返済は経費にならないが、利息部分は計上可能
- 司法書士報酬:登記や契約関連の専門家費用
- 通信費:物件管理に使っているスマホや回線費用(按分)
これらはほとんどの社長が「経費になると知っている」と言います。でも実際に全項目を計上できているかは別の話です。特に通信費は「プライベートと一緒に使っているから」と遠慮してしまう方が多いのですが、業務利用割合に応じた按分で問題なく経費にできます。
最も見落とされる経費が「交通費」
そして、7つの中でもっとも見落とされているのが交通費です。
物件の状態を確認しに行った電車代、管理会社との打ち合わせに使ったタクシー代、金融機関へ向かう際のガソリン代——これらはすべて経費として計上できます。
にもかかわらず、「たかが数百円だから」「領収書をとっていなかった」という理由で、何年も計上してこなかった社長が少なくありません。年に20〜30回物件を訪問していれば、交通費だけで5〜10万円規模になることもあります。積み重ねると決して小さくない金額です。
ICカードの履歴は後から印刷できることが多いので、まずは直近の利用明細を確認してみることをおすすめします。
「知ってるつもり」が一番怖い
賃貸経営の節税で失敗しやすいのは、「だいたい経費にしてる」という曖昧な認識のまま、何年も申告を続けてしまうことです。
今回紹介した7項目——減価償却費、管理費、固定資産税、火災保険料、ローン利息、司法書士報酬、交通費・通信費——を改めて一覧にして、自社の申告書と照らし合わせてみてください。一つでも漏れていれば、それは今期から修正できる可能性があります。
まだ賃貸経営の経費リストを顧問税理士と一緒に棚卸ししたことがないなら、決算前のこのタイミングでぜひ一度確認してみてください。「知ってるけどやってなかった」項目が、必ず一つは出てきます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。