先日、都内で人材派遣業を営む社長からこんな相談を受けました。
「今期、利益が想定以上に出てしまって。銀行に見せる決算書は黒字にしたいけど、税金はなるべく減らしたい。何かいい手はありませんか?」
利益が出ること自体は喜ばしい悩みです。ただ、何も手を打たないまま決算を迎えると、その利益の約30〜35%が法人税等として持っていかれる。そう考えると、手を打たない理由はありません。
そこで私が提案したのが、築古戸建てへの法人投資でした。「え、古い家ですか?」と最初は怪訝な顔をされましたが、仕組みを説明すると、話を聞き終わる頃には前のめりになっていました。
取得費が安いから、法人でも動きやすい
まず前提として、法人で不動産投資をしようとすると、「初期投資が大きすぎて動けない」という声をよく聞きます。都心のワンルームマンション、一棟アパート……たしかにまとまった資金が必要です。
ところが築古戸建ては話が違います。地方や郊外に目を向ければ、500万円以下、場合によっては200〜300万円台で購入できる物件も珍しくありません。
法人の余剰資金を使って動ける金額帯というのが、実はここにあります。「節税のために動きたいけど、キャッシュをそんなに出せない」という社長にとって、築古戸建ては入り口として非常に現実的な選択肢なのです。
リフォーム費用がそのまま利益を削る
築古物件を購入すると、多かれ少なかれ修繕が必要になります。これを「デメリット」と捉えるか「節税チャンス」と捉えるかで、見え方がまったく変わります。
修繕のための支出は、一定の要件を満たせば修繕費として損金算入できます。つまり、リフォームにかけた費用が、そのまま法人の利益を圧縮する経費になるわけです。
たとえば、物件購入後に壁紙の張り替えや水回りの整備で150万円かけたとします。これが経費になれば、法人税率30%として単純計算で約45万円の節税効果があります。「お金を使いながら節税できる」という感覚が、築古投資の面白いところです。
ただし、修繕費と資本的支出(減価償却が必要な支出)の区分は税務上の論点になりやすい部分です。どの工事が修繕費として落とせるかは、必ず税理士と相談しながら進めてください。
減価償却の「爆速」が最大の武器
ここからが本題です。築古戸建て最大のメリット、それが減価償却の速さです。
通常、木造建物の法定耐用年数は22年。しかし、すでに耐用年数を超えた築古の木造物件の場合、簡便法という計算方式を使うと、耐用年数がわずか4年になります。
これが何を意味するか。たとえば建物部分800万円の物件を取得したとすると、年間200万円を減価償却費として計上できます。それが4年間続く。キャッシュは出ていかないのに、帳簿上は毎年200万円の経費が積み上がる。これが「爆速償却」と呼ばれるゆえんです。
利益が年間1,000万円出ている法人なら、この1棟だけで課税所得を200万円圧縮できます。税率30%なら約60万円の節税。複数棟持てば、その効果は倍になっていきます。
減価償却は「お金が出ていかない経費」という点が最大のポイントです。保険料の前払いや設備投資とは違い、過去に購入した資産が毎年勝手に経費を生み出してくれる。これほど法人の利益調整に使いやすいツールは、なかなかありません。
やる前に押さえておきたい注意点
「じゃあ今すぐ買おう」と動く前に、いくつか頭に入れておいてほしいことがあります。
まず、減価償却が終わった後の話です。4年間で全額償却が終われば、当然その後は経費が出なくなります。売却するのか、保有し続けるのかも含めて、出口戦略をあらかじめ考えておく必要があります。
次に、物件の土地と建物の按分です。減価償却できるのは建物部分だけ。土地は償却できません。取得価格に対して建物の割合がどれだけ確保できるかは、物件選びの段階から意識しておきましょう。
そして、耐用年数の計算や修繕費の取り扱いは、税務調査の論点になりやすい領域です。「節税できそう」という直感だけで動くのではなく、必ず顧問税理士と一緒に進める体制を整えてください。
今期の利益が見えてきたら、動くタイミングを逃さないで
築古戸建ての節税効果は、購入した期から発生します。決算期の3〜4ヶ月前に「今期の着地が見えてきた」と感じたタイミングが、動き出すベストな時期です。
もし今期の利益が膨らんできているなら、一度「築古戸建てを法人で持つ」という選択肢を、税理士と一緒に検討してみてください。不動産投資と節税が同時に実現できる、思った以上に現実的な打ち手になるはずです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。