先日、飲食チェーンを経営するある社長からこんな連絡がありました。

「テナント物件を法人で買おうとしたんですが、メインバンクにあっさり断られまして……。理由もよくわからなくて」

話を聞いてみると、売上は順調、キャッシュフローも回っている。でも銀行の答えはノー。こういうケース、実はかなり多いんです。

法人融資には「見えないルール」があります。担当者も全部は教えてくれません。だからこそ、申請前に自社の状態を確認しておくことが、融資承認への最短ルートになります。


銀行が最初に開くのは「この3年間」の決算書

融資審査でまず見られるのは、直近3期分の決算書における経常利益です。

「黒字だから大丈夫」と思っている社長も多いのですが、問題は「薄利が続いていないか」という点。経常利益が毎期ギリギリの50〜100万円しか出ていない、あるいは1期でも赤字があるという場合、銀行の審査担当者の目には「返済余力が乏しい会社」として映ります。

特に不動産購入のような長期融資では、「この会社は10年・20年にわたって返済を続けられるか」という視点で見られます。足元の売上だけでなく、利益の安定性と継続性が問われるんです。

節税を意識するあまり、経費を使い切って利益をゼロに近づけている会社は要注意です。税金を減らすことと、融資を引けるバランスシートを作ることは、実は両立を考えて設計しないといけない。ここが難しいポイントでもあります。


「自己資本比率20%」という目安を知っていますか?

次に銀行が確認するのが、自己資本比率です。計算式はシンプルで、純資産÷総資産×100。これが20%を下回っていると、融資の難易度がグッと上がります。

例えば、総資産が1億円の会社であれば、純資産が2,000万円以上あることが一つの目安になります。

「うちは借入が多いから……」という社長も多いのですが、借入自体が問題なのではなく、それに見合った純資産が積み上がっているかどうかが問われています。利益を毎年きちんと内部留保として残していくことが、中長期的な融資力の強化につながります。

配当や役員報酬で利益を全額吐き出してしまうと、純資産は育ちません。ここも節税との兼ね合いで、戦略的に設計すべきポイントです。


役員報酬が「低すぎる」のも実はNG

「役員報酬は低く設定して、法人に利益を残す作戦です」という社長に時々お会いします。考え方としては理解できるのですが、融資審査では別の問題が起きることがあります。

銀行は融資の返済原資として、代表者個人の返済能力も見ています。役員報酬が極端に低いと、「もし会社が苦しくなったとき、社長個人は返せるのか?」と疑問を持たれてしまうんです。

月30万円以下の役員報酬だと、個人の信用力という面では弱いと見られるケースがあります。会社に利益を残しつつ、代表者としての報酬も社会的に見て合理的な水準に設定しておくことが、融資力を担保する上では重要です。


「断られてから」では遅い理由

この3つのポイントに共通しているのは、決算が締まった後では簡単には変えられないという点です。

経常利益は今期の数字が出てから変えられない。自己資本比率も同様。役員報酬は期中に変更すると税務上の問題が生じることもある。だから「融資を申請しようと思ってから準備を始める」では、タイミングが合わないことがほとんどなんです。

理想的なのは、不動産購入の検討を始めた段階で、1〜2期先を見越した決算設計に入ること。どの数字をどう見せるか、節税とのバランスをどう取るかを、戦略として組み立てていく必要があります。


銀行と「付き合い方」も融資に影響する

少し補足しておくと、融資審査は数字だけで決まるわけではありません。普段からメインバンクとどれだけ良好な関係を築いているかも、実は大きく影響します。

決算書を毎年きちんと提出する、事業計画を共有する、業績が悪いときも先に報告する——こういった地道な積み重ねが、いざというときの「信用」になります。

融資は「申請するもの」ではなく「関係性から生まれるもの」という感覚を持っておくと、長い目で見て有利に動きます。


法人での不動産購入を検討しているなら、まず自社の決算書を開いて、経常利益・自己資本比率・役員報酬の3点を確認してみてください。

「あ、これは整備が必要だな」と気づいたなら、次の決算期が来る前に動き始めるのがおすすめです。具体的にどう改善するかは会社の状況によって変わるので、信頼できる税理士と一緒に作戦を立てていきましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。