先日、ある社長からこんな相談を受けました。
「物件も決めた、銀行にも持ち込んだ。なのに、あっさり断られました……」
年商3億円の建設業を営む50代の社長です。個人ではなく法人での不動産購入を狙っていたのですが、融資の入口で躓いてしまった。話を聞いていくと、「あぁ、これは通らないな」とすぐにわかるポイントがいくつか見えてきました。
法人融資には、銀行が必ず確認する「見られどころ」があります。それを知らずに申し込んでも、残念ながら結果は変わりません。今回は、融資に失敗する社長に共通する3つのパターンをお伝えします。
経常利益が「薄い」か「赤字」が続いている
銀行が最初に手にするのは、過去3期分の決算書です。そこで真っ先に見るのが経常利益の推移です。
「売上は伸びてるんですよ」とよくおっしゃるのですが、銀行は売上高ではなく、本業でどれだけ稼いでいるかを見ます。経常利益が赤字だったり、黒字でも極端に薄い状態が続いていると、「この会社は返済できるのか」という疑問符がつきます。
特に節税を意識しすぎて、意図的に利益を圧縮している会社は要注意です。税金を減らすことと、融資を引くことはときに相反します。「節税でスカスカにした決算書を持っていっても、銀行には刺さらない」——これは融資の場面での鉄則です。
不動産購入を視野に入れている会社は、少なくとも申し込みの1〜2期前から、経常利益をある程度きれいに見せておく意識が必要です。
自己資本比率が20%を割っている
次に見られるのが、自己資本比率です。計算式はシンプルで、純資産÷総資産で出ます。
たとえば総資産が1億円で、純資産が1,500万円なら自己資本比率は15%。銀行が融資審査で一つの目安にするのが20%前後で、これを大きく下回っている場合は「財務の体力がない」と判断されやすくなります。
中小企業の多くは借入が膨らんでいたり、役員への貸付金が積み上がっていたりして、この数字が知らない間に悪化しています。役員貸付金はとくに嫌われます。銀行から見ると「本来は会社のお金なのに、社長が持ち出している」と映るからです。
自己資本比率を改善するには、利益を内部留保として積み上げていく地道な作業が必要です。あるいは、役員貸付金を計画的に返済していくことも有効な手段の一つです。すぐには動かない数字だからこそ、早めに手を打っておく価値があります。
役員報酬が「低すぎる」
これは盲点になる方が多いのですが、役員報酬の設定額も融資審査に影響します。
役員報酬を低く抑えて会社にお金を残す戦略をとっている社長は多いです。節税の観点からは一定の合理性もありますが、銀行は役員報酬を「社長個人の返済能力」として見ています。
月額報酬が20万円以下だったりすると、「この社長、万が一のとき大丈夫なのか」と思われてしまう。特に法人での不動産購入の場合、社長が連帯保証人になるケースも多く、個人の信用力も同時に問われます。
役員報酬は低ければいいわけではなく、会社の利益・税負担・個人の信用力、この3つのバランスで設計する必要があります。「とりあえず低く設定してきた」という方は、一度見直してみる価値があります。
3つを整えると、景色が変わる
①3期分の経常利益がきれいであること、②自己資本比率が20%以上あること、③役員報酬が返済能力として説明できる水準であること——この3点が揃っていると、銀行との会話が全く変わってきます。
冒頭の社長も、2期かけてこの3点を意識的に整えたうえで再申し込みしたところ、先日めでたく融資が通りました。「あのとき断られてよかったかもしれない」と笑っていましたが、まさにそのとおりだと思います。
融資は「通してもらうもの」ではなく、「通る状態を作るもの」です。
法人での不動産購入を考えているなら、物件を探す前に、まず自社の決算書を開いてみてください。そして気になる数字があれば、早めに専門家に相談することをおすすめします。動き出すタイミングが早いほど、打てる手は増えます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。