先日、賃貸物件を複数棟お持ちの社長から、こんな一言をもらいました。
「毎年、確定申告のたびに税金の多さに気が遠くなる。何とかならないものか」
年間の家賃収入が1,000万円を超えているにもかかわらず、すべて個人名義で受け取り続けていたのです。この一言を聞いたとき、「それは確かに損していますよ」と、つい前のめりになってしまいました。
個人で受け取り続けることのコスト
不動産オーナーが見落としがちなのが、「個人の税率」と「法人の税率」の圧倒的な差です。
個人の所得税と住民税を合算すると、所得が増えるほど税率は上がっていき、最高で約55%に達します。つまり、頑張って稼いだ家賃収入の半分以上が税金として消えていく計算になります。
一方、中小法人に適用される法人税率は実効税率ベースで約23%前後。この約30ポイント以上の差が、そのまま節税のポテンシャルになります。年間1,000万円の家賃収入があれば、適切に設計するだけで年間100万円以上の差が生まれることも珍しくありません。
「不動産管理法人」という仕組み
難しく聞こえるかもしれませんが、仕組みそのものはシンプルです。
個人オーナーが新たに法人(不動産管理会社)を設立し、その法人に物件の管理業務を委託します。そして法人へ「管理料」を支払うことで、個人の収入を合法的に法人側へ移すというものです。
一般的な管理料の目安は、家賃収入の5〜15%程度。法人はその管理料を収入として受け取り、法人税率で課税されます。個人の高い税率から法人の低い税率へ、所得をスライドさせるイメージです。
法人の利益は、たとえば家族を役員に登用して役員報酬として分散したり、退職金の積み立てに活用したりと、さらに節税の幅を広げることもできます。
設立の流れは3ステップ
実際に動き出す場合、大まかな流れは次の通りです。
まず、合同会社(LLC)または株式会社を設立します。合同会社は設立コストが低く、小規模なスタートに向いています。次に、個人オーナーと法人の間で管理委託契約を締結します。この契約書がのちに「実態のある取引」を示す重要な証拠になります。そして、毎月の家賃収入から一定割合を管理料として法人へ支払い、法人側で記帳・申告を行います。
文字にすると簡単ですが、実務では「どの物件を対象にするか」「管理料は何%が適切か」「役員報酬をいくらに設定するか」といった個別の判断が積み重なります。
見落とせない「管理実態」の問題
ここで、必ず押さえておきたい注意点があります。
税務調査で問題になりやすいのが、「名義だけ法人にしているが、実際には何もしていない」というケース。管理料の支払いが認められるためには、法人が実際に管理業務を行っている実態が必要です。
具体的には、入居者対応の記録、修繕の手配履歴、定期巡回の記録などを法人として残しておくことが重要です。形だけ作っても、実態が伴わなければ税務署に否認されるリスクがあります。
また、管理料が「相場として不自然に高い」と判断されると、その分が否認される可能性もあります。適切な料率の設定と、それを裏付ける業務内容の設計がセットで必要です。
動き出すなら、早いほど有利
法人を設立した後、その年の節税効果は設立タイミングに左右されます。期の途中から始めれば、その期の恩恵は限定的になります。つまり、検討を始めるなら、次の期首に合わせて動き出すのが理想です。
すでに年間の家賃収入が500万円を超えているオーナーであれば、管理法人の設立を真剣に検討する価値は十分にあります。まずは現状の所得と税率を確認した上で、信頼できる税理士に「うちのケースで試算するとどうなるか」を聞いてみてください。
数字を見れば、動くべきかどうかは自然とわかるはずです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。