先日、都内で複数の賃貸物件を法人で運営している社長からこんな話を聞きました。「家賃収入はそこそこ入ってくるんですが、毎年の所得税がじわじわ重くて。何かいい手はありませんか?」

法人で不動産を持っているのに、個人の税負担だけが膨らんでいく。このパターン、実はかなり多いんです。そして大半の方が活用していない制度があります。それが小規模企業共済です。

月7万円が「全額」消える仕組み

小規模企業共済は、中小企業の経営者や個人事業主が加入できる積立式の退職金制度です。掛金は月1,000円から最大7万円まで選べて、支払った全額が所得控除の対象になります。

月7万円掛ければ、年間84万円がそのまま課税所得から引かれる計算です。所得税と住民税の合計税率が30%の方なら、年25万円以上の節税になります。10年続ければ250万円超。これを「使っていない」のは、率直に言ってもったいないです。

法人不動産で役員報酬を取っている方は、その報酬から所得控除として差し引けるので、相性が特に良い。収益が安定していて報酬が高めに設定できる不動産オーナーこそ、フル活用してほしい制度なんです。

本当においしいのは「出口」にある

小規模企業共済の真価は、積み立て中よりも辞めるときに発揮されます

廃業や事業の譲渡、あるいは役員を退任するタイミングで共済金を受け取ると、税務上は「退職金」として扱われます。退職金には退職所得控除という非常に強力な控除があって、勤続年数が長いほど控除額が大きくなります。

20年加入して受け取った場合、退職所得控除は800万円。さらに退職所得は2分の1課税なので、実際に税金がかかる金額は驚くほど圧縮されます。ケースによっては、数百万円受け取っても課税がほぼゼロになることも珍しくありません。

積み立て中は所得控除で税金を減らし、受け取り時は退職所得扱いで課税を最小化する。いわゆる「入口と出口の両取り」ができる制度、それが小規模企業共済です。

法人不動産との組み合わせが強い理由

法人で不動産を運営している場合、役員報酬を通じて個人に利益を移す流れが一般的です。ただ、報酬が高くなるほど所得税・住民税・社会保険料が重くなる。ここで小規模企業共済を使えば、個人の手取りを確保しながら税負担だけを削れるわけです。

さらに、将来的に法人を整理したり、不動産を売却してリタイアするシナリオを考えている方には、出口での共済金受け取りが強力なバッファになります。不動産売却益への課税は避けにくくても、個人の手元資金を退職金として受け取ることで、トータルの税コストを下げる設計が可能です。

単体で使う制度ではなく、「法人スキームの中の一つのピース」として組み込むのが正しい使い方です。

加入前に確認しておきたいこと

小規模企業共済は良い制度ですが、いくつか注意点もあります。

掛金は途中で減額できますが、任意解約(自己都合で辞めること)の場合は元本割れのリスクがあります。特に加入から短期間での解約は不利なので、長期的に続けられる金額設定が重要です。

また、法人の役員として加入する場合、会社の規模や業種によって加入資格の確認が必要です。「うちは入れるのか?」と疑問に思ったら、中小機構の窓口か、顧問税理士に事前確認するのが確実です。

加入できる時期は「今」しかありません。来期の決算で節税したいなら、今期中に手続きを済ませておく必要があります。

まずは掛金をシミュレーションしてみてください

法人で不動産収益を上げているのに、個人の所得税だけが重い——そんな状況を感じているなら、小規模企業共済は最初に検討すべき手段のひとつです。

月いくら掛けるか、何年続けるか、どのタイミングで受け取るか。この3つを整理するだけで、数百万円単位の税コストの差が出てくることもあります。まだ加入していないなら、今月中に税理士と一度シミュレーションしてみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。