先日、不動産を3棟保有している年商3億の社長から、こんな相談を受けました。
「法人で不動産を持つようにはなったんですが、正直なところ節税になっているのかよくわからなくて……」
話を聞いてみると、減価償却と家賃収入の差額くらいは把握しているものの、それ以外の経費はほとんど計上できていないとのことでした。実は、法人で不動産を持っている社長の多くが、年間200万円以上の経費を見落としています。原因は「税理士が積極的に教えてくれない」ことにあります。
なぜ税理士は教えてくれないのか
税理士の本業は「申告誤りをなくすこと」です。攻めの節税アドバイスは本業の範囲外と感じている税理士も多く、「聞かれなければ答えない」というスタンスの方が少なくありません。
また、不動産経費の一部は要件の判断が難しく、グレーゾーンに触れたくない税理士が安全策として経費計上を避けることもあります。だからこそ、社長側が「こういう経費は使えますか?」と聞ける知識を持つことが重要です。
見落としがちな隠し経費5選
① 建物設備の早期償却
法人保有の建物は、構造ごとの耐用年数で減価償却しますが、空調・電気設備・給排水設備などは建物本体とは別に区分計上できます。これを「附属設備の個別計上」といいます。
設備は建物本体より耐用年数が短いため、早期に経費化できる金額が増えます。1棟あたり数十万円単位で変わるケースも珍しくありません。リフォーム時に一式で処理してしまっている場合、この区分を見直すだけで節税効果が生まれることがあります。
② 修繕費の即時経費化
修繕にかかった費用は「修繕費」として全額即時経費になるケースと、「資本的支出」として複数年に分けて償却するケースに分かれます。
この判断基準は意外と曖昧で、保守的な税理士は「資本的支出」に分類しがちです。修繕費として処理できれば、支出した年度に一気に経費化できます。20〜60万円の改装工事でも、この判断一つでその年の利益が大きく変わります。工事の目的や内容を正確に記録しておくことが、判断の鍵になります。
③ 物件視察の旅費
法人が保有・検討中の物件を見に行く出張費は、原則として経費になります。新規物件の下見、既存物件の現状確認、入居者トラブルの対応、融資打ち合わせのための金融機関訪問——これらはすべて「法人の業務に関連する旅費」として処理できます。
意外に見落とされているのが「物件購入の検討段階での視察費」です。実際に購入しなかった物件の旅費も、業務目的であれば経費として認められる場合があります。旅費規程を整備しておくと、より確実に処理できます。
④ 融資保証料
不動産購入時に信用保証協会や保証会社に支払う保証料は、経費として計上できます。一括払いの場合は期間按分が必要ですが、毎年一定額を費用として処理していくことになります。
この費用、実は「払ったことを忘れている」ケースが多いのです。融資の契約書類を改めて確認してみてください。年間数万〜十数万円が見落とされているかもしれません。
⑤ 専門家報酬
不動産に関連して支払う専門家への報酬も、法人の経費になります。不動産コンサルタントへの相談料、税理士・司法書士・弁護士へのスポット報酬、ホームインスペクション(建物調査)費用などが該当します。
「個人的なお金の勉強だから経費にならない」と思い込んでいる社長もいますが、法人の不動産管理・運用のための情報収集であれば、業務関連費として処理できます。セミナー参加費も同様です。
年間でどれくらいの差が出るか
仮に、この5項目で年間200万円の経費が追加で計上できたとします。実効税率34%であれば、節税額は約68万円です。10年続ければ680万円。不動産は長期保有が基本ですから、この差は確実に積み重なります。
「どうせ大差ないだろう」と思って見逃しているコストが、実は大きな機会損失になっているケースは少なくありません。
まず何から始めるか
最初のステップは、過去の決算書と領収書を見直すことです。見落としていた経費があれば、修正申告が可能な場合もあります(原則5年以内)。次に税理士に「この費用は経費になりますか?」と積極的に聞いてみてください。聞かれると動いてくれる税理士は多いです。
法人不動産を持っているなら、年に一度「経費の棚卸し」をする習慣をつけることをおすすめします。決算前にチェックリストを作って確認するだけで、年間の税負担は大きく変わります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。