先日、経営歴20年の建設会社の社長から、こんな話を聞きました。「ずっと個人名義の車を仕事に使っていて、ガソリン代だけ会社に請求してた。それで十分だと思ってた」と。

確認してみると、任意保険料も駐車場代も自動車税も、すべて個人の財布から出ていました。毎年かなりの金額を、みすみす取り逃がしていたわけです。

個人名義のままだと「見えない出費」が積み上がる

車を持つということは、動かすかどうかに関係なく毎月コストがかかります。自動車税、任意保険料、駐車場代。走れば走るほどガソリン代もかかるし、ローンを組んでいれば利息も発生します。車検が来れば、まとめて数十万円が飛んでいくこともあります。

個人名義のままだと、これらは「個人の支出」として処理されます。仕事に使っていても、法人の経費にはなりません。会社の利益を減らすことができないまま、毎年税金を払い続けることになります。

法人名義に切り替えると何が変わるか

社用車を法人名義にすると、業務で使っている割合に応じて、以下の費用をすべて法人の経費に計上できます。

  • 自動車税(車種によって年3〜11万円)
  • 任意保険料(月1〜2万円が相場)
  • ガソリン代(月2〜4万円)
  • 駐車場代(月1〜3万円)
  • ローン利息(元金は減価償却で別途処理)
  • 車検費・修繕費(2年ごとに10〜20万円)

これを年間で合計すると、車種や利用頻度にもよりますが、年100万円前後になるケースは珍しくありません。普通乗用車1台でこの数字が出ることを、意外に思う方も多いです。

節税効果は毎年確実に積み上がる

中小法人の実効税率は、課税所得の水準にもよりますが、おおよそ**23〜34%**の範囲に収まります。

仮に年間100万円の経費が増えたとすると、節税効果は年23〜34万円。利益が多い会社ほど税率も高くなるので、経費を増やすインパクトはさらに大きくなります。

しかも、これは一度仕組みを整えれば毎年自動的に積み上がる節税です。新しい節税策を毎期探し回る必要がありません。5年続ければ115〜170万円、10年続ければ230〜340万円の差になります。

「按分」の処理は丁寧に

法人の経費として認められるのは、あくまで業務に使った割合だけです。休日のドライブや家族の送り迎えなど、プライベートで使った分は経費から除外しなければなりません。

按分の方法としては、走行距離のログや業務日誌などで業務使用割合を記録しておくのが一般的です。「なんとなく8割は仕事で使っている」という感覚だけでは、税務調査に耐えられません。

手帳やスマートフォンのアプリで走行記録をつける習慣をつけておくと、申告時にも税理士への説明時にも、根拠が明確になります。

法人名義への切り替えで気をつけること

個人名義から法人名義に変更する際には、いくつか手続きが発生します。名義変更の登録費用がかかるほか、任意保険の契約者変更、ローンが残っている場合はローン会社との協議も必要になることがあります。

すでに個人で購入した車を法人に売る「現物売買」の形を取ることもあります。この場合は売却価格の適正性、つまり時価相当であることが重要になります。

また、車両の取得価格は減価償却の対象になるため、購入費用を一括で経費計上することは原則できません。ただし30万円未満の資産であれば、少額減価償却資産の特例を使って一括計上できる場合があります(青色申告の中小企業者が対象)。

「社用車がない」社長も一度試算してみる価値あり

現在、仕事にまったく車を使っていないという方も、一度試算してみることをおすすめします。取引先への移動、現場確認、営業回りなど、業務上の移動がある程度あれば、法人で車を取得して経費化するほうがトータルで有利になることは多いです。

リース契約であれば初期費用も抑えられ、月々のリース料が全額経費になるという整理もしやすくなります。

まだ個人名義のまま使い続けているなら、今期の決算が来る前に、顧問税理士と一度試算してみてください。積み上げてみると、想像以上の数字が出ることが多いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。