先日、決算が終わって間もない社長から、こんな連絡をもらいました。「去年、法人で倉庫を買ったんですが、消費税が返ってこなかったんです。税理士に確認したら、届出書が出ていなかったからって言われて。損した金額が気になってしょうがない」と。

話を聞いてみると、建物価格は1,500万円。消費税にして150万円。この金額が、たった1枚の届出書を出し忘れたことで、永遠に戻ってこない状態になってしまったんです。

消費税は「建物部分」にしかかからない

不動産を購入するときに支払う消費税は、建物部分にのみかかります。土地には消費税がかからないからです。

建物価格が1,000万円なら消費税は100万円。2,000万円なら200万円。購入金額が大きくなるほど、消費税の絶対額も膨らみます。そして、この金額が「ある手続きをしているかどうか」で、戻るか消えるかが決まります。

法人なら消費税を丸ごと取り戻せる

法人が「課税事業者」として消費税を申告している場合、事業に関連する仕入れにかかった消費税は「仕入税額控除」として、売上の消費税から差し引けます。

不動産を購入した年は、建物にかかる消費税が一気に「仕入れ消費税」として発生します。売上で預かった消費税よりも、支払った消費税が上回れば、その差額が還付されます。

たとえば、ある期の売上消費税が80万円で、建物購入にかかった消費税が200万円あったとします。この場合、差額の120万円が還付されます。事業規模によっては、数百万円単位の現金が戻ってくることも珍しくありません。

問題は、すべて「タイミング」にある

ここで多くの社長がつまずくのが、手続きのタイミングです。

消費税の還付を受けるためには、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署にあらかじめ提出しておく必要があります。そして、この届出書の提出期限が非常に厳格です。

提出期限:不動産を購入する事業年度の前期末まで

3月決算の法人が今年度(4月〜翌3月)に不動産を購入するなら、届出書は昨年3月31日までに提出済みでなければなりません。「物件が決まった」「今期中に買おうと思っている」という時点で気づいても、すでに間に合いません。

購入後に遡って届出を提出することは認められていないからです。タイミングを外してしまったら、その年の消費税還付は諦めるしかありません。

この制度を使えないケースもある

注意点として、すべての法人がこの制度を使えるわけではありません。購入前に必ず確認しておくべき点が2つあります。

ひとつ目は、年間売上が1,000万円以下の免税事業者です。消費税の申告義務がない法人は、そもそも還付の仕組みの外側にいます。ふたつ目は、簡易課税制度を選択している法人です。簡易課税は申告が楽になる半面、実際の仕入れ消費税を控除できないため、不動産購入時の還付とは相性が悪い制度です。

自社が今どちらの状態にあるか、意外と把握していない社長も多いです。まずここを確認するところから始めるのが第一歩です。

「物件が決まってから連絡する」を今日やめる

不動産購入は金額が大きい分、消費税も大きくなります。1億円の建物なら消費税は1,000万円です。その金額が戻るかどうかが、届出書という1枚の書類にかかっているわけです。

物件を探し始めた段階、あるいは「来期中に不動産を買いたい」と考え始めた段階で、顧問税理士に「課税事業者の選択状況と届出のタイミング」を確認するようにしてください。タイミングさえ合えば、翌決算で大きな還付が受けられる可能性があります。

「物件が決まってから税理士に連絡する」という習慣を持っている社長は、今日から変えることをおすすめします。不動産に限らず、大きな設備投資を検討しているなら、必ず事前に相談するのが鉄則です。今期中に法人での不動産購入を検討しているなら、まず一本、顧問税理士に電話してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。