先日、年商3億円ほどの建設業の社長から、こんな話を聞きました。「不動産は法人で持ってるんですが、正直、税金がどれだけ減ってるのかよくわからなくて」と。

聞いてみると、顧問税理士からは「減価償却できますよ」と一言あったきり。他にも使えるはずの経費がいくつかあるのに、誰も教えてくれていなかったんです。

法人で不動産を保有している社長は少なくありませんが、使えるはずの経費を全部活用できているケースは、意外と多くありません。知っているか知らないかだけで、年間数十万円の差が生まれることもあります。

税理士が教えてくれない、本当の理由

「税理士が言わない」というのは、意地悪をしているわけではありません。多くの顧問税理士は記帳・申告を中心に業務が回っており、節税の積極提案まで踏み込んでくれる事務所はそれほど多くないのが実情です。

役員社宅の計算や修繕費の判断など、要件が複雑な項目は、否認リスクを避けてあえて提案しないケースもあります。つまり、社長側から「これは経費にできますか?」と聞かない限り、話が出ないことも多いんです。

だからこそ、社長自身が「使えるはずの経費」を把握しておくことが重要です。

隠れ経費① 役員社宅

おそらく5つの中で最もインパクトが大きいのが、この役員社宅です。社長が住む自宅を法人名義で契約し、法人が家賃を支払う形にすると、家賃の大部分を法人経費にできます。

税務上の計算式で算出した「適正家賃(通常は賃料の10〜20%程度)」を役員が会社に支払えば、残りの80〜90%は法人経費として認められます。月30万円の家賃なら、約24〜27万円が経費に。年間で見ると、それだけで300万円近い経費になる計算です。

ただし、計算根拠の書類をきちんと整備しておかないと税務調査で否認されるリスクがあります。「やってみたい」と思ったら、まず税理士に計算を依頼するのがおすすめです。

隠れ経費② 減価償却

建物を取得した際、土地は減価償却できませんが、建物部分は法定耐用年数に応じて毎年経費計上できます。鉄筋コンクリートなら耐用年数47年、木造なら22年です。

1億円の物件で土地:建物が5:5なら、建物5,000万円を47年で割った約106万円が毎年の経費になります。現金は出ていかないのに経費が計上できる「非現金支出」の代表格で、利益を圧縮するうえで非常に有効です。

隠れ経費③ 修繕費・管理費

物件の修繕費用や管理会社への管理費も、全額法人経費です。エアコンの交換、外壁塗装、水回りのメンテナンスなど、毎年コツコツかかる費用がそのまま経費になります。

注意したいのは、修繕費と資本的支出の区別です。おおむね100万円未満の修繕なら一括経費計上できますが、建物の価値を高める大規模改修は資産計上して減価償却する必要があります。金額や工事内容によって判断が変わるため、大きな工事の前に税理士へ確認しておくと安心です。

隠れ経費④ 融資の利息

法人で不動産を購入した際のローン利息も、全額経費計上できます。元本返済は経費になりませんが、利息部分はしっかり落とせます。

金利1.5%、借入残高5,000万円なら年間約75万円の利息経費です。この項目は見落とされることは少ないですが、計上漏れがないか一度確認してみてください。

隠れ経費⑤ 固定資産税

毎年1月1日時点の所有者に課される固定資産税も、法人所有の不動産であれば全額経費計上できます。都市部の物件では年間30〜100万円を超えることもあり、積み重なると無視できない金額になります。

固定資産税の納付通知が届いたら、そのまま経費として計上するだけ。シンプルですが、忘れずに落としていくことが大切です。

5つ合わせると、どれだけ節税できるか

役員社宅240万円 + 減価償却106万円 + 修繕・管理費50万円 + 利息75万円 + 固定資産税30万円——控えめに見積もっても、年間200万円以上の経費を積み上げることは十分可能です。物件の規模や条件によっては500万円超になることもあります。

法人の実効税率を約34%とすれば、200万円の経費増加は約68万円の節税効果。500万円なら約170万円。「知っているか知らないか」だけでこれだけの差が生まれると思うと、一度棚卸しをする価値は十分にあります。

法人で不動産を持っているなら、今期の決算前に顧問税理士へ「これらの経費は全部計上できていますか?」と確認してみてください。質問するだけで動いてくれる税理士は、意外と多いものです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。