先日、知人の経営者からこんな連絡が来ました。「法人で不動産を買って節税しているはずなのに、シミュレーションより全然効果が出ていない」という相談です。
話を聞いてみると、物件の選び方も、ローンの組み方も問題はありませんでした。では何が原因だったのか。それは「役員報酬の設定を不動産節税と連動させていなかった」という、意外なところに落とし穴がありました。
4〜6月は「節税の設計図を引き直す」3ヶ月
3月決算の会社にとって、4〜6月は役員報酬を変更できる唯一のタイミングです。税法上、役員報酬は「定期同額給与」でなければ損金として認められません。つまり期の途中で増減させると、その差額分が経費にならなくなってしまいます。
この3ヶ月を過ぎると、次に見直せるのは1年後。その間に打てた手が打てなくなります。
多くの会社が「去年と同じ額で」と何となく更新してしまっていますが、これが節税上は大きなロスにつながることがあります。
法人不動産節税の基本的な考え方
法人で収益不動産を購入すると、建物部分の取得価格を毎年「減価償却費」として経費計上できます。この減価償却費が法人の利益を圧縮し、法人税を減らす仕組みです。
たとえば、年間600万円の減価償却費が出る物件を法人で保有しているとしましょう。法人税の実効税率が約34%だとすると、計算上は年間で約200万円の節税になります。
600万円 × 34% ≒ 204万円
数字にすると、インパクトがありますよね。ただし、この効果が最大限に出るかどうかは、法人にどれだけ課税所得が残っているかによって大きく変わります。
役員報酬が「節税効果の出口」を左右する
ここが、多くの社長が気づいていないポイントです。
法人の課税所得は、売上から役員報酬を含む経費を引いた残りです。役員報酬を高く設定しすぎると、法人利益が減って不動産の減価償却費を使い切れなくなります。逆に低く抑えすぎると、法人に利益が残りすぎて、減価償却費を差し引いてもなお法人税の負担が重くなる場合があります。
要するに、役員報酬の額が変わると、不動産節税の効き方も変わるのです。両者は別々に考えるのではなく、セットで設計するものです。
実際の設計の流れ
理想的な進め方はシンプルです。まず今期の売上・経費の着地見込みを出し、法人の予想利益を把握します。そこに不動産の年間減価償却費を当てはめ、残る課税所得を試算したうえで、役員報酬をどう設定するかを決めます。
このとき、税理士と確認しておきたい数字は主に4つです。
- 今期の予想課税所得(減価償却費を引く前の数字)
- 保有不動産の年間減価償却費の合計
- 役員報酬を10万円単位で変動させた場合の税負担の変化
- 社会保険料との兼ね合い(報酬を上げれば社保負担も増える)
この4点を4〜6月中に整理するだけで、節税の精度がまるで違ってきます。
「来年ちゃんとやる」が最も高くつく
節税相談の現場でよく耳にするのが、「今年はとりあえず去年と同じにして、来年しっかり見直します」という言葉です。
しかしその「来年」の間に、年間200万円前後の節税チャンスが消えていきます。10年続ければ2,000万円の差です。不動産節税は「物件を買えば終わり」ではなく、毎年の役員報酬設計と組み合わせることで本来の効果が出ます。
法人で不動産を持ちながら、役員報酬を感覚で決めているなら、この4〜6月に一度シミュレーションを依頼してみてください。数字を見るだけで、何をすべきかが見えてきます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。