先日、法人で不動産投資を進めている社長から、こんな相談を受けました。
「融資を申し込んだら、法人の手元資金が少なすぎて審査が通らなかった。かといって役員報酬を減らしたくもない。どうすれば……」
この社長、実は役員報酬の設定を見直すだけで、状況が大きく変わる可能性があります。
役員報酬が「不動産の頭金」を決めている
あまり知られていませんが、法人で不動産投資をするときの効率は、役員報酬の金額によって決定的に変わります。
理屈はシンプルです。法人で不動産を取得するには、一定の自己資金が必要です。金融機関は「この法人にどれだけキャッシュが残っているか」を厳しく見ます。役員報酬が高すぎると、利益が出ていても法人口座にお金が残りにくい。結果として頭金を用意できず、融資審査が通らないという事態になります。
一方で「じゃあ役員報酬を下げればいい」と単純にいかないのが、この問題の難しいところです。
「高すぎ」も「低すぎ」も損をする
役員報酬を下げれば、法人に資金は残ります。ただし法人の利益が増えると、その分だけ法人税の負担が増えるという問題が出てきます。
逆に役員報酬を上げすぎると、今度は個人の所得税・住民税が増加します。年収が1,500万円を超えてくると、税率は実質50%近くに達することもあります。稼げば稼ぐほど個人に資金が残りにくい状況になるわけです。
つまり、高すぎても低すぎても、どちらかが余分に税金を払う構造になっています。毎年の決算を「なんとなくこのまま」で乗り越えている方は、一度立ち止まって考えてみてください。
最適バランスを見つけると何が変わるか
一般的には、法人税率と個人の所得税率が交差するポイントを探すことになります。会社の規模や利益水準によって異なりますが、多くのケースで、役員報酬を年収ベースで数十万円単位で調整するだけで、法人税と個人所得税の合計が年間100万円以上変わることがあります。
たとえば年商1億円規模の会社で、役員報酬を1,200万円から900万円に見直した場合。個人の税負担は下がり、法人の手元資金が増えます。その差額が不動産投資の原資になる。しかも法人に資金が残ることで、金融機関からの融資評価も改善します。
「役員報酬を変えただけで、不動産投資の話が一気に動き始めた」という声は、実際によく聞きます。
変更できる窓は年に一度だけ
ここで重要な注意点があります。役員報酬の変更には、厳格な時期の制限があります。
税務上、役員報酬を「定期同額給与」として損金に認めてもらうには、事業年度開始から3ヶ月以内に変更する必要があります。3月決算の会社であれば、6月末が実質的な締切です。
この期間を過ぎてから報酬額を変えると、増額分や変動分が損金として認められなくなる可能性があります。「節税のつもりが逆効果」になりかねないので、タイミングは非常に重要です。
毎年この窓が開いている間に、現状の役員報酬が最適かどうかをきちんと確認しておく習慣をつけておきましょう。
「まだ見直していない」なら今がチャンス
役員報酬を何年も変えていない、という社長は意外と多いです。会社の売上や利益が変わっても、なんとなくそのままにしているケースが少なくありません。
でも今の設定が最適かどうかを確認するだけで、年間の税負担が100万円以上変わることがあります。その資金を法人の内部留保として積み上げ、不動産投資の原資にしていく。こうした「資金の流れを設計する」視点が、長期的な資産形成では非常に重要です。
決算月が近い方は特に、今すぐ税理士に「役員報酬の最適額を再検討したい」と相談してみてください。変更の窓は、一度閉まると1年待ちになります。今期の3ヶ月以内を、ぜひ有効に使ってほしいと思います。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。