先日、物件を取得して初めての決算を迎えた社長とお話ししていたときのことです。「先生、減価償却は47年でやっておけばOKですよね?」という一言を聞いて、思わず「ちょっと待ってください」と言いたくなりました。

その社長、何も間違っていません。鉄筋コンクリート造の建物なら耐用年数は47年が原則です。でも、そのやり方だと毎年かなりの金額を「計上できるのに、していない」状態になっている可能性が高いんです。

建物をまとめて47年で償却すると何が起きるか

不動産を買ったとき、多くの会社が建物の取得価額をそのまま47年で割り算しています。それ自体は間違いではありません。ただ、建物の中にある電気設備・給排水設備・冷暖房空調設備・エレベーターといった「建物附属設備」は、建物本体とは別の耐用年数が定められているんです。

たとえば電気設備(電灯・動力)は15年、給排水・衛生設備は15年、冷暖房設備(ダクト)は13年といった具合です。これらを建物と切り離して個別に計上する方法を「区分計算」と呼びます。建物附属設備は耐用年数が短いぶん、同じ取得価額でも毎年の減価償却費が大きくなります。つまり、早いペースで費用化できるわけです。

1.5億円の物件で試算するとこうなる

実際の数字で見てみましょう。

取得価額1億5,000万円のRC造の物件があったとします。建物全体を47年一括で償却すると、毎年の減価償却費は約320万円ほどです。

ここで設備部分を2,500万円として区分計算すると話が変わります。建物本体(1億2,500万円)と設備部分(2,500万円)を分けて計算すると、年間の合計償却費は430万円超。差額は年間110万円以上になります。実効税率30%で換算すると、年間33万円超の税負担の差です。

10年続ければ330万円以上、20年続ければ700万円近い差が積み上がります。「たったそれだけ?」と感じるかもしれませんが、逆に言えば何もしなければその分だけ余計に税金を払い続けているということです。

なぜこれが見落とされるのか

区分計算にはっきりとしたメリットがあるにもかかわらず、多くの会社で活用されていない理由は主に三つです。

ひとつ目は、「そもそも選択肢として知らなかった」というケースです。減価償却の処理は税理士に任せきりで、区分計算について話し合ったことがない社長は少なくありません。

ふたつ目は、「区分のための資料作成が手間」という問題です。工事費の明細や設計図書をもとに設備ごとの取得価額を算定する必要があり、取得直後に動かないと根拠書類の収集が難しくなります。

そして三つ目は、「どこまでが建物でどこからが附属設備か」という判断のグレーゾーンです。構造や用途によって扱いが変わるため、専門家との連携が欠かせません。

やるなら物件取得後すぐが正解

区分計算に取り組むなら、物件を取得した直後、遅くとも最初の決算前が理想です。根拠となる工事費明細や竣工図書は、時間が経つにつれて入手しづらくなることがあります。また、すでに償却を始めた資産を後から区分し直すには修正申告が必要となり、手続きが煩雑になります。

「昨年物件を買ったが、まだ申告していない」というタイミングなら間に合う可能性があります。心当たりがある方は今すぐ担当の税理士に相談してみてください。

一点だけ注意しておきたいこと

区分計算は適法な節税手法ですが、設備価額を恣意的に膨らませたり、本来附属設備に含められない項目を無理やり算入したりすると、税務調査で否認されるリスクがあります。根拠となる工事費明細・図面はしっかり保管し、適正な金額で処理することが大前提です。

法人で不動産を持っているなら、一度「附属設備の区分計算はしているか?」と確認してみてください。もし「していない」なら、今期の決算前に検討する価値は十分あります。数十万円単位で変わる話ですから、確認だけでもしておいて損はないはずです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。