先日、都内で製造業を営む社長からこんな相談を受けました。「自宅は個人名義で持っているんですが、法人でも不動産って意味あるんでしょうか?」
その社長は年商3億円、毎年しっかり利益を出しているにもかかわらず、不動産に関する節税を一切手つかずにしていました。「不動産は個人で持つもの」という先入観が強く、法人での保有を考えたことすら一度もないとのこと。
実は、法人で不動産を保有するだけで、3段階の節税メカニズムが自動的に働き始めます。うまく組み合わせれば、年間150〜300万円の節税も十分に現実的な話なのです。
第3位:年100万円超が「自動的に」経費になる減価償却費
まず基本から押さえておきましょう。法人が建物(土地は除く)を購入すると、取得価額を法定耐用年数で割った金額が毎年「減価償却費」として自動的に経費計上されます。
たとえば5,000万円の建物を購入した場合。鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年なので、5,000万円÷47年=約106万円が毎年の経費になります。
ここがポイントで、現金支出は物件購入時に終わっているのに、帳簿上では毎年100万円超の経費が発生し続けます。利益が出ている法人にとって、これはかなりありがたい仕組みです。
中古物件であれば耐用年数がさらに短くなるため、減価償却のスピードが上がって節税効果が高まる、というのも覚えておきたいポイントです。
第2位:借入利息が「全額」経費になる
不動産購入に融資を使った場合、そのローンの支払利息が全額損金(法人税上の経費)に算入できます。
個人の住宅ローンには「住宅ローン控除」がありますが、控除額には上限があります。一方、法人の場合は支払利息の全額を経費にできるため、特に借入額が大きいケースでは節税効果が明確に違います。
具体的には、1億円の物件を年利2%で借りれば、年間利息は約200万円。これがそのまま法人の経費になります。法人税の実効税率を30%とすれば、この利息だけで60万円の節税効果が生まれる計算です。
不動産取得に融資を使うことは、節税の観点からもメリットがあると言えます。
第1位:家賃の大部分が経費になる役員社宅スキーム
そして、3つのなかで最も節税効果が大きいのが役員社宅スキームです。
仕組みはこうです。法人が物件を取得(または賃借)し、社宅として役員に貸し出します。このとき、役員が法人に支払う家賃は、国税庁の通達に基づく「一定の計算式」で算定した金額でよいとされています。
この計算式は固定資産税評価額や床面積などをもとに算定されるため、市場の相場よりもかなり低い金額になるのが通常です。たとえば、市場相場が月20万円の物件でも、役員の自己負担は月2〜3万円程度で済むケースがあります。
差額の17〜18万円分は法人が負担する経費となるため、それだけで年間200万円超が法人の経費になる計算です。
ただし、「タダ貸し」や「極端に低い家賃」は役員報酬とみなされて追徴課税のリスクがあります。計算式の適用を必ず税理士に確認してから実行することが大前提です。
3つを組み合わせれば、節税額は現実的な数字になる
ここまでの3手段を整理すると、こうなります。
- 減価償却費:年100〜150万円超の自動経費(物件規模による)
- 借入利息:年50〜200万円の経費(借入規模・金利による)
- 役員社宅差額:年100〜200万円超の経費(物件・計算式による)
これらが組み合わされば、合計で年150〜300万円の節税は現実的な範囲に収まります。法人税の実効税率が高いほど、節税のインパクトは大きくなります。
注意しておきたいこと
念のためお伝えしておきたいのが、法人不動産はリスクゼロではないという点です。
不動産は流動性が低く、必要なときにすぐ売れません。また、法人から個人に物件を移す際は「売買」として時価が適用されるため、含み益がある場合は課税が生じます。
物件選定を誤れば節税どころか不動産事業の赤字が膨らむこともありますし、役員社宅スキームは計算式の適用を誤ると税務署に否認されるリスクがあります。節税スキームとして機能させるには、購入前から税理士・不動産の専門家と綿密に連携することが必須です。
毎年500万円以上の利益が出ている法人なら、不動産を活用した節税は一度真剣に検討する価値があります。「不動産は個人で持つもの」という先入観を外すだけで、まったく違う選択肢が見えてきます。まずは顧問税理士に「法人での不動産取得について相談したい」と切り出してみてください。それが節税強化への第一歩です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。