先日、収益不動産を数棟持つ製造業の社長から連絡がありました。「2026年の改正で法人の不動産節税は終わったと取引先に言われたんですが、うちはもう手遅れですか?」

その言葉に、少し驚きました。確かに改正はありましたが、「終わった」は大げさです。正確には「一部のスキームに手が入った」というのが実態で、本質的な節税の枠組みは今も健在。今期の対策をこれから考える社長には、まだ十分に間に合います。

改正後でも使えて、税務上も整理されている手法を3つ、具体的に解説します。

第3位:役員社宅で居住費を法人経費に変える

社長の自宅、今は個人で家賃を払っていますか?

同じ物件を法人名義で借り上げて、役員へ転貸するのが「役員社宅」という手法です。この場合、社長が個人で負担する家賃は国税庁の定める計算式で算出した最低限の金額だけでよく、残りは全額、法人の経費として計上できます。

たとえば月20万円の賃貸物件なら、社長の自己負担が2〜3万円程度になることも珍しくありません。差額の17万円が法人経費になる計算で、年間では200万円超が節税対象になりえます。

ポイントは「法人が直接の契約者になること」。個人名義のままでは適用できませんし、住宅の規模・構造によって計算方法も変わります。既に持ち家がある社長は移転のタイミングを含め、実務を知る税理士と一緒に設計するのが安全です。

第2位:個人名義の不動産を法人に移す

収益不動産を個人で持っているなら、この選択肢は必ず検討してください。

個人の家賃収入には、所得が増えるにつれて最大55%の所得税・住民税がかかります。一方、法人の実効税率は約34%。同じ家賃収入でも、法人経由にするだけで課税率が一気に20ポイント近く下がります。

年間1,000万円の家賃収入で試算してみます。個人課税で所得税率33%・住民税10%が適用されれば、手元に残るのは450万円前後。法人経由なら660万円程度になります。年間200万円以上の差で、10年持てば2,000万円超の違いが出ます。

ただし、個人から法人への移転には譲渡所得税・登録免許税・不動産取得税などのコストが発生します。移転コストの回収に何年かかるかをシミュレーションしてから判断するのが鉄則です。売却価格の設定を誤ると「時価より安く売った」として追徴課税のリスクもあるため、ここは専門家を交えた慎重な設計が必要です。

第1位:法人での減価償却を最大限に活かす

これが最も王道で、かつ継続的に効果が大きい手法です。

不動産の建物部分は毎年「減価償却費」として費用計上できます。RC造(鉄筋コンクリート)なら耐用年数47年、木造なら22年。この期間にわたって建物の取得価格を毎年費用に落とせるため、帳簿上の利益を圧縮しながらキャッシュは手元に残るという構造になります。

法人実効税率34%の法人が1億円のRC造物件を取得した場合、年間の減価償却費はおおよそ200万円前後。毎年68万円程度の節税効果が継続して得られる計算です。物件規模が大きくなるほど、効果も比例して拡大します。

重要なのは「土地は減価償却できない」という点です。購入時に建物と土地の価格をどう按分するかで、年間の節税額が大きく変わります。新築か中古か、構造や築年数によっても戦略が異なるため、取得前に税理士に相談しておくことを強くおすすめします。

「改正後は手遅れ」は思い込みです

2026年の改正で対処されたのは、法人税の繰り延べを使った一部のスキームです。役員社宅・法人移転・減価償却という本質的な節税の柱に、直接の影響はありません。

「改正があった=すべての対策が終わった」という誤解が広まっているのは、正直もったいないと思います。正しい知識を持って動いている法人とそうでない法人では、10年後の資産規模に億単位の差がつくことも珍しくないのです。

まだ法人での不動産節税に手をつけていないなら、今期の決算前が動き出すベストタイミングです。早く動けば動くほど、選択肢は広がります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。