先日、都内で収益不動産を2棟持つ社長から、こんな相談を受けました。「固定資産税も保険料も毎年払っているのに、なぜか会社の経費にできないと言われて……」と。
話を聞いてみると、不動産はすべて個人名義のまま。法人とは切り離された状態で所有していたのです。これが「法人不動産」と「個人不動産」の決定的な分かれ目で、ここに年間数百万円単位の節税余地が眠っていることがあります。
法人名義の不動産があれば、当然のように経費にできる項目が7つあります。「全部やっている」という方は、顧問税理士を信頼していい証拠。まだ対応できていない項目が一つでもあれば、今期中の見直しを強くおすすめします。
持っているだけでかかるコストを丸ごと経費に
法人不動産の節税で最初に押さえたいのが、「所有コスト」の経費化です。個人名義のままだと一切使えないのに、法人名義にした瞬間から対象になる項目が3つあります。
固定資産税は毎年春に来る、あの納付書です。個人名義なら所得控除の対象にもなりにくいですが、法人名義なら全額損金算入できます。土地と建物を合わせると、都市部の物件では年間数十万円になることも珍しくありません。
火災保険料も同様です。法人契約にすることで支払い時に経費計上できます。長期一括払いの場合は期間按分が必要ですが、それでも年間の保険コストをきちんと経費化できます。
管理費、つまり管理会社への委託料も法人名義なら全額損金です。家賃収入の5〜10%程度を払っているケースが多く、物件規模によっては年間数十万円になります。
この3項目だけを見ても、年間50〜100万円規模の経費が積み上がることがあります。
築古物件こそ効く:修繕費と減価償却費
次に押さえたいのが、修繕費と減価償却費の2項目です。
修繕費は外壁塗装、給排水管の交換、屋根の補修など、建物の維持に必要な支出です。「現状回復」に該当するものはその年の全額経費にでき、築古物件では年間数百万円規模で計上できることもあります。ただし「資産の価値を高める」工事は資本的支出として減価償却になるので、区分の判断は税理士に確認してください。
減価償却費は、建物の取得価額を耐用年数にわたって少しずつ経費化する仕組みです。特に中古物件は耐用年数が短縮されるケースがあり、新築より早いペースで大きく経費化できることがあります。
ここで一点、誤解されがちなことを伝えておきます。「年間500万円の減価償却費を計上できる」と聞くと「500万円の節税!」と思いたくなりますよね。でも実際の節税額は「経費額×実効税率(約30%)」です。500万円の経費でも、手元に残る節税効果は約150万円。経費そのものが現金になるわけではありません。ここを混同したまま意思決定している社長は意外と多いので、冷静に計算することが大切です。
法人不動産の最強節税:役員社宅
そして7項目の中で最もインパクトが大きいのが、役員社宅です。
仕組みはシンプルです。法人が物件を借り上げ(または所有し)、役員はそのうちの一部を「賃料相当額」として会社に支払います。この賃料相当額は税法上の算式で決まり、実際の家賃よりはるかに低い水準になります。残りの8〜9割が法人の損金になる、という構造です。
たとえば月30万円の賃貸物件なら、役員の自己負担は3〜6万円程度。残りの24〜27万円が法人経費です。年間で290万円超が損金になる計算で、個人で家賃を払い続けるのと比べると、年間数十万円から場合によっては100万円を超える差になることがあります。
10年続けば、その差は数百万〜1,000万円規模になることもあります。
賃料相当額の計算方法は、物件の固定資産税評価額をもとにした税法上の算式があります。独自の判断で設定してしまうと後から否認されるリスクがあるので、設計段階で必ず税理士に確認してください。
残り2項目:取得コストも忘れずに
7項目のうち残り2つも見落とさないようにしましょう。
借入金利子は、不動産購入時の融資に対して支払う利息です。個人ローンでは使える場面が限られますが、法人名義なら支払利息の全額が損金算入できます。金利が高い時期に取得した物件を持っている法人は、毎年の利息コストが相当な経費になっているはずです。
不動産取得税・登録免許税などの取得コストは、法人での購入なら経費として計上するか資産計上して減価償却するかを選べます。個人購入よりも柔軟な処理が可能です。
「当然やってる」のが抜け漏れのもと
これだけの項目があると、「うちはちゃんとやっているはず」と思いがちです。でも実務では、管理費の請求書が個人口座から引かれたままになっていたり、役員社宅の賃料相当額が算式通りに計算されていなかったりするケースが意外に起きます。
法人不動産の節税は、大掛かりな仕組みを作らなくても、まず「経費漏れをなくす」だけで年間数十万円から数百万円の差が生まれることがあります。決算期が近い方は特に、今一度担当税理士と一緒に棚卸しをしてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。