先日、法人で初めてオフィスビルを購入した社長から、こんな相談を受けました。「経費になるって聞いてローンを組んだんですが、実際に何が経費になるのか、よくわかってなくて」。

これ、珍しい話ではないんです。法人不動産のメリットはよく語られますが、何がどこまで経費になるのかを体系的に把握している社長は意外と少ない。経費計上できる項目を積み上げると、全部で15もあります。

今回は特に見落としが多い上位3項目を中心に、実務的な視点でお伝えします。

3位:固定資産税と保険料は全額落とせる

法人で不動産を保有していると、毎年1月1日時点の所有者として固定資産税・都市計画税が課税されます。これは全額、損金算入できます。

火災保険や地震保険も同様です。個人所有だと保険料控除の上限がありますが、法人では支払い保険料の全額を経費にできます。

この2項目はほとんどの社長がすでに活用できている領域です。ただし、保険料を複数年分まとめて一括払いした場合は期間按分が必要になるので、長期契約のときは処理方法を確認しておきましょう。

2位:支払利息・管理費・修繕費——「積立金」の落とし穴

ローンを組んで購入した場合、毎月の返済額のうち利息部分だけが経費です。元本の返済は経費になりません。これを混同しているケースが意外と多いので、念のため確認しておいてください。

管理委託料や清掃費、入居者対応の費用なども全額経費です。複数の不動産を保有している場合は、物件ごとに管理費を分けて把握しておくと帳簿が整理しやすくなります。

修繕費で特に注意したいのが「修繕積立金」です。管理組合に毎月積み立てている段階では、まだ経費になりません。実際に修繕工事が行われて費用が確定した時点で初めて計上できます。「積み立てているのに経費にならないの?」という声はよく聞きますが、そういう仕組みです。

もう一点、修繕費か資本的支出(資産計上)かの区分も重要です。原状回復なら修繕費として一括経費、機能や価値が上がるなら資本的支出として減価償却します。大きな改修工事の前には税理士に相談しておくのが無難です。

1位(断トツ):減価償却費——毎年使える「現金が出ない経費」

見落とし率ナンバーワンは減価償却費です。正確には「見落とし」というより、「どれだけ大きなインパクトがあるか、わかっていない」と言ったほうが近いかもしれません。

建物の取得価額を法定耐用年数にわたって毎年経費化できる仕組みで、構造によって耐用年数が変わります。木造は22年、RC造(鉄筋コンクリート)は47年です。

具体的に試算してみます。建物価格1億円のRC造マンションを購入した場合、定額法で計算すると年間の減価償却費は約213万円。実効税率を30%とすると、毎年64万円近くが節税になる計算です。

しかもこれ、キャッシュアウトを伴わない経費です。過去に払ったお金を今期の損金に振り替えるだけなので、現金は出ていかないのに税引前利益が減ります。この効果が47年間続くというのが、法人不動産最大の魅力です。

残りの12項目も一応押さえておく

上位3位以外にも、まだ経費になるものがあります。代表的なものを挙げると——

  • 借入時の保証料・融資手数料(繰延資産として処理)
  • 不動産取得税(取得時に経費計上)
  • 入居者募集の広告費
  • 物件視察のための交通費・出張費
  • 電気・水道・ガスなどの公共料金(事業用部分)

といった具合です。どこまで経費にできるかは物件の用途や契約形態によって変わるため、個別に確認が必要な項目もあります。

「買った後」が節税の本番

法人で不動産を購入するとき、多くの社長は「買う決断」に全力を使います。でも節税の観点では、購入後にどう計上するかのほうが長期的なインパクトは大きいんです。

特に減価償却の計上方法と、修繕費・資本的支出の区分は、誤った処理を続けると税務調査で指摘を受けるリスクがあります。購入前の段階から税理士と連携して、「毎年いくら経費化できて、節税額はいくらか」を試算しておくのが理想です。

不動産税務が得意な税理士にまだ相談できていないなら、今期中に一度、顧問先を見直してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。