先日、賃貸マンションを法人名義で保有している社長から、こんな相談を受けました。

「不動産の経費って、減価償却費と固定資産税くらいしか思いつかないんですよね。他に何かありましたっけ?」

実はこれ、多くの社長が陥りやすい誤解です。法人が不動産を保有している場合、計上できる経費は思っているよりずっと多く、見落としているだけで年間数十万円〜数百万円の損になっているケースが珍しくありません。

今回は、法人保有不動産の「隠れ経費」を7つ整理します。ご自身の帳簿を確認しながら読んでみてください。

①建物と設備を分けた減価償却費

不動産の減価償却は「建物」と「設備」を区分して計算するのが基本です。ところが、一棟まるごと「建物」として計上してしまっている会社が意外と多い。

電気設備・給排水設備・空調などは耐用年数が15年以下のものも多く、建物と分けて計算すれば初期に大きな費用を計上できます。購入時の固定資産台帳の組み方ひとつで、毎年の税負担が変わってきます。既存物件でも、税理士と相談しながら見直す余地があります。

②借入利息は全額経費

不動産購入のために借入をしている場合、支払利息は全額経費に算入できます。元本部分は経費になりませんが、利息部分はきちんと損益計算書に計上すべき費用です。

毎月の返済明細で「利息」の金額を把握しているか、一度確認してみてください。意外と銀行口座引き落としのまま「何となく処理」されていることがあります。

③固定資産税・都市計画税の計上タイミング

固定資産税が経費になることは多くの社長がご存じです。ただ、落とし穴は「計上タイミング」にあります。

納税通知書は4〜5月頃に届きますが、年4回払いの未払い分は決算時に未払金として計上できます。決算月が3月や6月の会社では、残り分を計上し忘れて申告してしまうケースが散見されます。決算前にかならず通知書を引っ張り出して確認しましょう。

④管理委託料は空室期間も計上できる

管理会社に委託している場合の委託料は当然経費ですが、見落とされやすいのが「空室期間中の管理費」です。

入居者がいなくても、管理会社との契約によっては月額管理費が発生し続けます。収益がゼロの期間でも、この費用は立派な経費です。空室が長引いている物件ほど積み上がっていきますので、物件ごとに確認する価値があります。

⑤火災保険料は按分処理が必要

火災保険料も当然経費計上できます。注意が必要なのは、長期一括払いをした場合です。

5年分を一括払いしたからといって全額をその年に計上することはできません。「前払費用」として資産計上し、毎年分割して費用化します。逆に、この処理を忘れて前払費用のまま放置されているケースも見かけます。保険証券と帳簿を照らし合わせてみてください。

⑥20万円未満の小修繕費はその期に即全額計上

クロス張り替え、設備の部分修理、外壁の一部補修など、20万円未満の修繕費はその事業年度に全額経費として計上できます。

判断のポイントは「原状回復かどうか」です。使えなくなった設備を元に戻す工事であれば修繕費扱いが原則。工事の内訳書を取り寄せておくと、税務調査でも説明がしやすくなります。

⑦取得時の登記費用・印紙代(見落とし率ナンバーワン)

7項目の中で最も見落とされているのがこれです。

不動産購入時に支払う登録免許税、司法書士報酬、印紙代などは、取得時の費用として経費計上できます(または取得原価に算入して減価償却)。ところが、購入直後の慌ただしい時期に処理を忘れたまま翌期に持ち越されてしまうケースが非常に多い。特に期末近くに購入した物件は要注意です。不動産を取得した年の帳簿を一度振り返り、登記費用がきちんと反映されているか確認してみてください。

今期中に帳簿を一度見直す

法人保有の不動産は、賃料が安定して入ってくる分、税務面の管理が「後回し」になりがちな資産です。7項目すべてに漏れなく対応できているかどうか、一度チェックしてみてください。

1項目でも抜けがあれば、その分だけ余計に税金を払っていることになります。複数棟を保有している場合は物件ごとに管理台帳を整備しておくと、決算処理がぐっと楽になります。決算が近いなら、今すぐ担当の税理士に相談するのが一番の近道です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。