先日、顧問先の社長と決算の打ち合わせをしていたとき、こんな話になりました。事務所の近くに月5万円の駐車場を借りているという話題になり、「それ、個人で払っていますか?」と尋ねると、「当たり前でしょう、会社の経費にしたらまずいかと思って」とおっしゃった。
でも、これは大きな誤解です。法人の車両を業務で使うために借りている駐車場は、会社の経費にするのが正しい形です。個人払いを続けることで、毎年かなりの税金を余分に払い続けているケースが、実はとても多いのです。
月5万円の駐車場で、年間いくら損しているか
シンプルに試算してみましょう。
月5万円の駐車場を個人で払い続けると、年間60万円が課税所得に含まれたままになります。法人実効税率が25%だとすると、この60万円を経費にできるかどうかで、年間15万円の税額が変わります。
15万円と聞くと「たいしたことない」と感じる社長もいるかもしれません。でも10年で150万円です。社長がオーナーである会社から出ていくお金なのに、手続き一つしていないだけで150万円を余分に払い続けることになる。これは、どう考えてももったいない話です。
さらに、消費税の課税事業者であれば、仕入税額控除の対象にもなります。節税効果はそれだけで終わらないのです。
解決策はシンプル。「契約者を会社にする」だけ
やるべきことは難しくありません。駐車場の賃貸借契約を、個人名義から法人名義に切り替えるだけです。
今の契約が残っている場合は、次回更新のタイミングで契約者を会社に変更します。管理会社や大家さんに「法人契約に切り替えたい」と伝えれば、対応してくれるケースがほとんどです。
会社が駐車場を契約し、社長がその駐車場を業務で使用する形にすることで、賃料は全額法人の経費に計上できます。仕訳も単純で、「地代家賃 / 普通預金」として処理するだけ。特別な手続きは不要です。
ただし、業務での使用が前提になります
一点だけ注意が必要です。「業務用途」として認められることが前提になるという点です。
法人の車で外回りや配送に使っている駐車場であれば、まず問題ありません。ただし、実態として私的な用途がほとんどという場合は、税務調査で「本当に事業用ですか?」と問われることがあります。
また、社長の自宅近くの駐車場を法人経費にする場合は、「会社の業務に必要な駐車場」として説明できることが求められます。業種によっても判断が変わるため、個別の状況は税理士に確認するのが安全です。外回りの多い会社であれば認められやすく、デスクワーク中心の業種であれば「通勤用では?」と見られるリスクもゼロではありません。
「ずっとこのやり方だから」が一番もったいない
相談を受けていて、もったいないと感じるのは、「昔からこうしていたので」という慣習で損をしているケースです。
創業当初に深く考えずに個人払いにして、そのまま何年も経過してしまっている。本人は悪意もないし、不正をしているわけでもない。ただ、知らないまま続けているだけで、毎年余分に税金を払っている。
こういったケースは、駐車場だけでなく、携帯電話代や、自宅の一部を事務所として使用している場合の家賃按分など、他の費目でも同じことが起きがちです。まずは今期の支払いを棚卸しして、「個人払いになっているもの」を一覧化してみるといいでしょう。そのなかに、会社で経費にできるものが隠れているはずです。
駐車場代を法人契約にするのは、難しい節税策でも、グレーな手法でもありません。正しい費用の処理をするだけのことです。それが長期でみると大きな差になります。今の契約が個人名義になっているなら、次の更新前に一度契約内容を確認してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。