先日、年商4億の製造業を営む社長からこんな電話がかかってきました。「不動産を買うと節税になるとは聞いていたんですが、それって役員報酬とも組み合わせられるんですか?」と。

その方、すでに法人で収益物件を1棟持っていたのですが、「ただ保有しているだけ」の状態でした。不動産の節税効果を半分も活かせていなかったんです。

じつは、法人不動産と役員報酬を「同時に設計する」と、節税が3つのレイヤーで重なる構造になります。それぞれ単体でも効果はありますが、組み合わせることで年間の税負担が数百万円単位で変わってくる。今日はその仕組みを順番に解説します。

第1段階:不動産の減価償却で法人税を削る

法人が収益物件を持つと、建物部分を毎年「減価償却費」として経費に計上できます。たとえば1億円の物件(うち建物部分が7000万円、木造なら耐用年数22年)であれば、年間で200〜300万円規模の費用が帳簿に計上されます。

実効税率が約34%の法人なら、それだけで年間70〜100万円の法人税削減が見込めます。しかも現金は出ていかない。帳簿上の費用で税金を減らせるのが、減価償却の本質的なメリットです。

ただしここで止まっているのは、まだ「1段階目」に過ぎません。

第2段階:不動産収益を原資に役員報酬を設計し直す

法人が不動産収益を得るようになると、会社のキャッシュフローに余裕が生まれます。このタイミングで役員報酬の金額を見直すのが、2段階目の節税です。

仕組みはシンプルです。法人から社長個人へ役員報酬を支払うと、法人側では経費になって課税所得が圧縮されます。そして個人側では給与所得控除が使えます。法人でも個人でも、同時に節税効果が発生するわけです。

法人の実効税率34%と個人の所得税・住民税を合わせた限界税率を比較しながら、最適な報酬額のゾーンを探っていく作業になります。この設計を一度も見直していない社長は、かなり多い印象があります。不動産を持ったタイミングは、役員報酬を再設計する絶好の機会です。

第3段階:退職金を不動産収益から積み立てる

3段階目が、最も見落とされがちかつインパクトが大きいポイントです。不動産収益で会社のキャッシュが蓄積されていくと、将来の「役員退職金」の原資として活用できます。

役員退職金は、適切な計算式で算出された金額であれば全額が法人の経費になります。そして受け取る社長側では退職所得として計算されるため、同額を給与でもらうよりも大幅に税負担が軽くなります。ざっくり言えば「法人で経費化しながら、個人でも軽課税で受け取れる」という二重のメリットがあります。

不動産を活用した3段階の設計をすべて組み合わせると、年間で480万円の税負担削減を実現した社長も実際にいます。もちろん物件規模や個人の所得状況によって数字は変わりますが、「何も設計していない状態」との差は、想像以上に大きくなります。

設計を誤ると逆効果になることも

一点、重要な注意があります。役員報酬は一度決めると原則として期中に変更できません。毎年の株主総会(定期同額給与のルール)に合わせて設計する必要があるため、タイミングを外すと1年間そのままになってしまいます。

また、役員報酬を増やしすぎると個人の税率が上がって逆ざやになるケースもあります。減価償却の計上タイミング・役員報酬の改定時期・退職金の積み立てペース、これらを一体で考えないと効果が半減します。

だからこそ、「不動産を買ったら税理士に相談する」ではなく、「買う前から設計を一緒に考える」という順序が大切です。

まずは今期の役員報酬を見直すところから

3段階の設計をフルに組み合わせるには時間がかかりますが、最初の一歩は役員報酬の現状確認だけでできます。今の報酬額が「なんとなく決めた数字」のままになっているなら、不動産の有無にかかわらず一度見直しをおすすめします。

法人の決算が近い方は特に、来期の報酬設計を今のうちに税理士と相談しておくと、来年の税負担が大きく変わる可能性があります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。