先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。
「利益は毎年出てるんですが、なんか税金ばかり取られて手元に残らないんですよ」
話を聞いてみると、不動産は自宅も社宅も個人で保有、法人ではノータッチ。これで年商2億を超えているとなると、毎年相当な額を「無駄に」払い続けていることになります。
今回は、そんな社長に私が最初にお伝えする「不動産×法人の節税TOP3」をご紹介します。知っているかどうかで、年900万円以上の差が生まれる話です。
第3位:役員社宅制度(節税効果 約110万円/年)
まず手軽に始められるのが、役員社宅制度です。
「社宅」というと「社員向け」のイメージがありますが、役員も対象になります。法人が賃貸物件を借り上げて、それを社長に「社宅」として貸し出す仕組みです。
具体的にどれくらい得なのか。月30万円の物件を社長が直接借りると、全額が個人の手取りから出ていきます。しかし法人が借り上げ、法定の計算式で算出した「賃貸料相当額」だけを社長が負担すれば、残りはすべて法人の経費になります。
この賃貸料相当額は物件の規模によって変わりますが、月30万円の物件でも社長の自己負担は3万円程度に収まるケースがほとんどです。差額の27万円が毎月経費に落ちる、つまり年間324万円が課税所得から消える計算になります。税率35%で試算すれば、節税効果は約110万円。しかも社長は「実質3万円で月30万の物件に住める」というキャッシュフロー面のメリットもあります。
注意点として、自宅を「社宅」にするには、会社が賃貸借契約の当事者になっている必要があります。個人名義の契約のまま「経費に落としたい」では認められません。既存の賃貸なら契約を法人名義に切り替える手続きが必要です。
第2位:建物の減価償却(節税効果 約31万円/年〜)
次に、不動産を法人で保有したときの「減価償却」の話をします。
建物は毎年少しずつ「目減りしている」として、法定の耐用年数にわたって経費に計上できます。この仕組みが減価償却です。
耐用年数は構造によって異なり、木造は22年、RC(鉄筋コンクリート)造は47年です。建物取得価額が2,000万円の木造物件なら、定額法で計算すると毎年約91万円を経費に落とせます。税率35%なら節税額は年31万円超。キャッシュアウトなしに利益を圧縮できるのが最大の魅力です。
「でも土地には減価償却はないでしょ」というツッコみはその通りで、土地と建物に分けて考えることがポイントになります。築古の物件は建物比率が高くなることも多く、減価償却の旨味が出やすいとも言われます。物件の購入時に土地・建物の内訳をどう設定するかも、税理士に相談すべきポイントのひとつです。
第1位:不動産収入を法人に帰属させる(節税効果 約210万円/年)
3つの中でもっとも効果が大きいのが、「不動産収入を法人で受け取る」という設計です。
個人で不動産収入を受け取ると、給与や事業所得と合算されて累進課税が適用されます。年収が高い社長は、不動産収入に最高で55%(所得税45%+住民税10%)の税率がかかることも珍しくありません。
一方、法人税の実効税率は中小企業で約34%。この差を使うだけで、年1,000万円の不動産収入に対して210万円の差が生まれます。
仕組みとしては、不動産を法人名義で取得するか、個人所有の不動産を法人に「管理委託」「一括借り上げ」という形で収益を移す方法があります。いきなり法人に売却するのが難しい場合でも、家賃収入の一部を法人に流せる設計は存在します。ここは税理士によって方針が分かれるところでもあるので、顧問税理士としっかり相談することをおすすめします。
3つを組み合わせると「年900万円超」も現実的
ここまでの3手法を整理すると、こうなります。
- 役員社宅制度:年約110万円の節税
- 建物の減価償却:年約31万円の節税(物件規模次第でさらに拡大)
- 不動産収入の法人帰属:年約210万円の節税
合計でも350万円超ですが、それぞれの物件規模や収益を大きくすれば、3手法を組み合わせて年900万円超の節税も十分に現実的な数字になります。「節税のために不動産を買う」のではなく、「不動産を使うなら、正しく法人で設計する」という順序が大切です。
もしまだ不動産絡みの節税を何もやっていないなら、まず役員社宅制度から始めてみてください。今の賃貸物件の契約を法人名義に切り替えるだけでも、今期から効果が出ます。税率の高い社長であればあるほど、この設計を後回しにするコストは大きいはずです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。