先日、年商3億円の建設会社を経営する社長から、こんな相談を受けました。「法人で不動産を買うと節税になると聞いたんですが、具体的にどういう仕組みなんでしょう?」と。
実はこの質問、ここ1年で10人以上の社長から受けています。それほど「法人×不動産」の節税効果に注目が集まっているということです。結論からお伝えすると、法人で不動産投資を行うと、税負担が1,000万円単位で変わるケースがあります。ただし「不動産を買えば節税できる」という単純な話ではなく、4つの仕組みを理解した上で戦略的に組み合わせることが重要です。
仕組み①:減価償却で課税を繰り延べる
法人で建物を購入すると、取得価額を法定耐用年数にわたって分割して費用計上できます。これが減価償却です。
たとえば、取得価額1億円の築25年の木造アパートを購入した場合、法定耐用年数の残りが4年なら年間2,500万円の償却費が損金になります。仮に法人税率が30%なら、年間750万円の税負担が減る計算です。課税を将来に繰り延べる仕組みとはいえ、その効果は絶大です。
仕組み②:不動産の赤字を本業の黒字と相殺する
個人の場合、不動産所得の赤字を給与所得と損益通算するには制限があります。しかし法人なら、不動産事業で出た赤字をそのまま本業の利益と相殺できます。
本業で年1,000万円の利益が出ているところに、不動産事業で300万円の赤字が生じた場合、課税所得は700万円に圧縮されます。借入を活用した不動産投資は初期に赤字が出やすいため、この損益通算効果が特に有効に機能します。
仕組み③:役員社宅で手取りを実質的に増やす
法人が所有する物件を社宅として代表者に貸し出す方法です。国税庁の通達で定められた計算式(固定資産税評価額をベースにした算式)によって算出された賃料だけを個人が会社に支払えばよく、差額分を会社が負担する形になります。
市場家賃30万円の物件でも、通達計算式による賃料が5万円程度になるケースがあります。差額の25万円が法人の損金となり、個人の可処分所得は実質的に増えます。同じ金額を給与でもらうと所得税・社会保険料がかかりますが、社宅の仕組みなら無駄なコストが発生しません。
仕組み④:不動産収益から退職金を設計する
法人の不動産収益を活用して、将来の役員退職金の原資を積み上げる方法です。退職金には「退職所得控除」という強力な特典があり、勤続年数が長いほど非課税枠が大きくなります。勤続30年なら控除額は1,500万円、それを超えた分も2分の1課税という大きな優遇があります。
不動産からの安定収益を原資に内部留保を積み上げ、退職時に退職金として支給する設計をしておくと、同じ金額を毎年給与でもらうより圧倒的に手残りが増えます。この「出口設計」を早い段階から描いておけるかどうかが、法人不動産の成否を分けます。
4つを組み合わせると効果が乗数的に大きくなる
4つの仕組みはバラバラに使うより、組み合わせることで効果が格段に高まります。
たとえば、法人で1億円の物件を購入し、減価償却で年間数百万円を損金計上しながら、同じ物件を社宅として活用し、将来の退職金を見据えた収益計画を立てる。このシナリオで税負担が累計1,000万円以上変わる事例は、決して珍しくありません。
ただし、注意点があります。法人で不動産を所有すると、売却時の譲渡益が法人税の課税対象になります。個人なら分離課税で税率が低く抑えられますが、法人では他の所得と合算されるため、入口の節税効果が出口で吹き飛ぶことになりかねません。
法人不動産の節税は「買えば得」ではなく「設計で得る」ものです。決算期や資金計画を見据えて、早めに専門家と相談しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。