先日、年商3億の建設会社を経営する社長から、こんな連絡がありました。「タワマンを買って相続対策しようと思ってるんだけど、どう思う?」と。
正直なところ、その瞬間に背筋が冷えました。タワマン節税は、すでに2024年の時点で実質終了しています。「古い情報」のまま動いていたら、節税どころか大きなロスにつながりかねない。
2026年の今、不動産を使った節税の常識は静かに、しかし確実に変わっています。「前と同じやり方で大丈夫」という思い込みが、実は一番のリスクです。今日は現場でよく聞かれる不動産節税の急所を3つ、整理してお伝えします。
タワマン節税は「終わった話」として更新する
まず最初に、これだけははっきり言っておきます。タワマン節税は、もう以前のようには使えません。
2024年1月以降、高層マンションの相続税評価額は市場価格に近い水準に改正されました。それまでは、市場価格と相続税評価額の間に大きな差があり、その差を利用して相続税を圧縮するスキームが広く使われていました。その「差」が制度的に埋められた今、かつてほどの節税効果は期待できません。
厄介なのは、インターネット上に古い情報が残り続けていることです。「タワマン 節税」で検索すると、2023年以前の記事がいまだにヒットします。忙しい社長が「これ使えそう」と判断してしまうのも無理はない。
もし最近、タワマン絡みの節税提案を受けているなら、まず「2024年改正後の評価額ではどうなりますか?」と確認することを強くおすすめします。
役員社宅スキームは今も有効だが「書類」が命
次に、現役で使えるけれど税務調査で問題になりやすいのが、役員社宅スキームです。
会社名義で物件を借り上げ、役員が住む代わりに家賃の一部を法人経費にする方法です。設計次第で年間数十万円から百万円単位の節税になるケースもあり、法人オーナーには馴染みの深い手法です。
ただし、2026年現在、この手法への税務調査の視線は確実に厳しくなっています。特に問題になりやすいのが、賃貸料相当額の算定根拠を書面で残していないケースです。
法人が役員から受け取る家賃は、税法上の「賃貸料相当額」以上でなければなりません。この金額は固定資産税の課税標準額などをもとに計算しますが、その根拠書類がないと、「実態は全額給与だ」と否認されるリスクが高まります。否認されれば、追徴税に加えて加算税・延滞税も発生します。
スキーム自体はまだ有効です。ただし、根拠書類の整備と毎年の見直しが、節税になるかペナルティになるかの分かれ目だと思ってください。
中古物件の加速償却は2026年も「現役」
そして、今でも使い勝手がいいのが、法定耐用年数を超えた中古物件の加速償却です。
築22年超の木造物件(法定耐用年数22年を超えたもの)を法人で取得すると、耐用年数を最短4年に短縮して計算できます。1,000万円の物件であれば、4年間で毎年250万円を経費に落とせる計算です。実効税率34%で試算すると、1,000万円の投資に対して約340万円の節税効果が見込めます。
ポイントは「法人で買う」という点です。個人の場合は累進課税の影響などでメリットが薄くなりやすいですが、法人であれば経費算入の効果が税負担の軽減に直結しやすい。
ただし注意点があります。この手法は取得後数年間に節税効果が集中します。売却時には減価償却後の帳簿価額で譲渡益が計算されるため、出口を考えずに動くと後から税負担が跳ね返ってきます。「今期の節税」だけを見て購入を決めると、トータルでは損をするケースもあります。
不動産節税は「今の税制」で確認するのが鉄則
不動産を絡めた節税は、税制改正や税務調査の動向によって有効性が大きく変わります。数年前まで当たり前に使われていた手法が、今は逆にリスクになることもある。
「昔これで節税できた」という成功体験がある社長ほど、情報の更新が後回しになりがちです。節税は常に、「今の税制でどうなるか」を起点に考えるのが大前提です。
不動産での節税を検討しているなら、購入前に必ず信頼できる税理士に「2026年時点の有効性と出口までのシミュレーション」を確認してから動いてください。焦って決算対策を打つより、中長期の設計を先に固めた方が、手残りは確実に大きくなります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。