先日、年商3億の建設業の社長からこんな相談がありました。「法人で初めて収益物件を買ったのですが、税理士から経費処理の方法が間違っていると指摘されて、修正申告になりそうです」。最終的な追加負担は、200万円を超えていました。
法人不動産は、正しく使えば強力な節税ツールです。個人より実効税率が低く、経費の幅も広い。これは事実です。ただ、法人特有のルールを知らないまま動くと、むしろ税負担が増えてしまいます。
今回は、特に間違いやすい経費ミスTOP3をお伝えします。購入前に5分だけ読んでおくだけで、数十万〜200万円単位の差がつく話です。
3位:修繕費と資本的支出を混同している
物件を取得した直後にリフォームをする社長は多いです。「購入後の工事費は全額経費になる」と思い込んでいる方も少なくありませんが、これは正確ではありません。
税法では、工事の性質によって「修繕費」と「資本的支出」に分類されます。修繕費は原状回復のための支出で、全額その年の損金になります。一方、物件の価値を高めたり耐用年数を延ばすような工事は「資本的支出」として、減価償却で数年にわたって経費化しなければなりません。
壊れた給湯器の交換は修繕費ですが、間取りを変えるリノベーションや耐震補強は資本的支出に該当することが多いです。判断の目安として「1つの工事で60万円以上かかるなら資本的支出の可能性が高い」と覚えておくといいでしょう。
一括で経費処理して税務調査で否認されると、過少申告加算税として本税の10〜15%が上乗せされます。100万円の否認で10〜15万円の追加負担。リフォーム費用が大きいほど、このリスクは無視できません。
2位:取得時の諸費用を初年度に全額経費処理している
不動産を購入するとき、物件価格以外にもさまざまな費用がかかります。仲介手数料、登録免許税、司法書士報酬、不動産取得税……これらをまとめて初年度の経費にしたくなる気持ちはよくわかります。
しかし、これらの費用の多くは物件の「取得原価」に算入する必要があります。物件本体と同様に、減価償却を通じて少しずつ経費化していくのが原則です。
3000万円の物件であれば、仲介手数料だけでおよそ100万円になります。これを初年度に一括で経費処理した場合、税務署から否認されるリスクがあります。「その年に全額が経費にならない」というより、「何年かかけて経費になる」というイメージで捉えておくといいです。
購入時にかかった費用を全部使い切ろうとするほど、かえって税務リスクが高まります。初年度の処理は慎重に確認することをおすすめします。
1位:役員社宅の家賃計算を間違えている
これが最も多く、最もインパクトが大きいミスです。
「法人名義で物件を買って、役員に安く貸せば節税になる」という話は広く知られています。ただ、この「安く貸す」の計算方法を間違えている社長が非常に多いのです。
よく耳にするのが「実際の家賃の半額を役員が負担すればいい」という理解です。しかし、これは大きな誤解です。
国税庁の通達では、役員社宅の適正家賃(賃貸料相当額)は次の3つの合計で計算します。
- 固定資産税の課税標準額 × 0.2%
- 12円 × 建物の総床面積(㎡)÷ 3.3
- 固定資産税の課税標準額 × 0.22%
この計算式で出た金額を役員が毎月会社に払わないと、差額が「役員給与」として認定されます。
役員給与に認定されると何が起きるか。社会保険料の算定基礎に含まれるため保険料が増加し、さらに法人税の損金にもなりません。節税のつもりが社会保険料の増加を招き、トータルでマイナスになるケースがあります。
「家賃の半額を払っているから大丈夫」と思っていた社長が、実際には通達上の適正家賃の3分の1以下しか払えていなかった、という例は珍しくありません。まず市区町村から届く「固定資産税課税明細書」で課税標準額を確認してみてください。計算自体はシンプルです。
法人不動産は、正しく使えば強力な節税ツールになります。ただ「なんとなく経費になりそう」という感覚で動くと、今回お伝えした3つのミスを踏みやすい。
購入前に一度税理士とシミュレーションをしておくだけで、初年度の負担が大きく変わります。特に役員社宅を検討している方は、今日中に賃貸料相当額の計算式を確認しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。