「法人で不動産を買えば節税になるって聞いて、さっそく物件を探しています」——こんな相談が、最近ずいぶん増えています。
確かに、法人名義で収益不動産を取得すれば、減価償却費を経費に計上して法人税の負担を減らせます。それ自体は間違いではありません。
ただ、詳しく話を聞いてみると、3つの大きな思い違いをしているケースがほとんどです。その思い違いのまま物件を買うと、期待した節税効果の半分以下しか得られないどころか、売却時に想定外の大増税を食らうことになりかねません。
盲点① 土地代は1円も経費になりません
仮に5,000万円の収益物件を法人で取得したとします。減価償却できるのは「建物部分」だけです。
土地は時間が経っても価値が減らないとされているため、税務上は減価償却の対象外。土地3,000万円・建物2,000万円という内訳であれば、年々経費に落とせるのは建物の2,000万円分だけ。5,000万円全額が節税の原資になるわけではありません。
これだけでも節税効果は大幅に変わります。さらに都心の物件ほど土地割合が高く、なかには価格の7〜8割が土地という物件もあります。「高い物件ほど節税できる」とは必ずしも言えないのです。
盲点② 「経費100万円」は「節税100万円」ではない
建物2,000万円を法定耐用年数で割り、仮に年間100万円の減価償却費が出たとします。このとき「年100万円の節税になった!」と喜ぶのは、残念ながら大きな誤解です。
節税額は「減価償却費 × 実効税率」で計算します。中小企業の法人税実効税率はおおむね22〜34%程度ですから、100万円の減価償却費から生まれる実際の節税効果は22〜34万円にとどまります。
「100万円の経費で100万円の節税」と思い込んでいると、効果を3倍近く過大評価することになります。もちろん年22〜34万円でも積み重なれば大きな金額ですが、投資の意思決定は実効税率込みの正確な数字で行いましょう。
盲点③ 売却時に減価償却した分がまるごと課税される
ここが最も見落とされやすく、かつダメージが大きいポイントです。
法人が不動産を売却するとき、売却益は「売却価格 − 帳簿価額」で計算されます。帳簿価額とは、取得原価から毎年の減価償却費を差し引いた残額のことです。
毎年100万円の減価償却を10年続ければ、帳簿価額は1,000万円分下がります。仮に物件を買ったときと同じ価格で売れたとしても、帳簿価額が下がっている分だけ「売却益」が膨らみ、その全額に法人税がかかります。
毎年コツコツ得た節税効果が、売却時にまとめて回収されるようなイメージです。「数年後に売って利益を出したい」というプランがあるなら、出口での課税を最初から計算に入れておかないと、後で青ざめることになります。
買う前に「出口まで」設計する
法人不動産投資は、正しく設計すれば有効な節税手段のひとつです。ただし、その効果を正しく見積もるには、少なくとも次の3点を事前に確認しておく必要があります。
- 物件の土地・建物の内訳比率(建物割合が高いほど節税効果が大きい)
- 実効税率を使った年間節税額の実態(額面の22〜34%が目安)
- 売却予定時期と、売却時の課税シミュレーション
「法人で不動産を買えば節税になる」は本当のことです。ただ、「いくら節税になるか」を正確に把握しないまま動くと、期待と現実のギャップに後で苦しむことになります。物件を探す前に、まず顧問税理士とシミュレーションを一緒に作ってみてください。そのひと手間が、将来の大きなトラブルを防ぎます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。