先日、年商3億円の建設会社を経営する社長から相談を受けました。「税理士に法人で不動産を買ったほうがいいと言われたんですが、正直よくわからなくて」とのこと。

よく聞くと、数年前から個人で収益物件を買い続けていたそうです。それ自体は悪いことではないのですが、「法人で買っていたらどうだったか」を試算してみて、思わず声が出てしまいました。毎年100万円近く余分に税金を払っていた可能性があったからです。

1億円の物件を法人で買うと何が起きるか

結論から言います。1億円の収益物件を法人名義で取得すると、年間200万円前後の経費を会社の損金に算入できる可能性があります。

「200万円も?」と驚く社長も多いのですが、内訳を見ると意外と納得できます。法人で物件を取得した場合に計上できる主な経費は、建物部分の減価償却費、借入金のローン利息、管理委託費、固定資産税・都市計画税、火災保険料、修繕費などです。

個別の費目はそれほど大きくなくても、合算すると「こんなに経費になるのか」と感じる社長は多いです。これらが積み重なることで、物件の規模や構造によっては年200万円を超えることも珍しくありません。

200万円の経費増で節税額はいくらになるか

中小企業の実効税率はおおむね33〜35%前後です。仮に34%で計算してみましょう。

200万円 × 34% = 約68万円。年間68万円の節税というと、ピンとこないかもしれません。ただ、これが10年続けば680万円、15年なら1,020万円になります。「知っているか知らないか」の差だけで、これだけの金額が手元に残るかどうかが変わってくる。

冒頭の社長が青ざめた理由が、これでわかってもらえると思います。

個人保有と法人保有、何が違うのか

個人で不動産を保有すると、毎月入ってくる家賃収入は「不動産所得」として課税対象になります。他の所得と合算されるため、役員報酬が高い社長は不動産所得にかかる税率も高くなりがちです。最高税率は55%ですが、実態として40〜45%に達しているケースも少なくありません。

一方で法人名義にすれば、家賃収入は法人の収益として取り込み、さまざまな経費と相殺できます。役員報酬や退職金制度との組み合わせ次第では、さらなる最適化も視野に入ります。

同じ物件を保有しているのに、個人と法人で毎年50〜100万円以上の差が出ることもある。これが10年・20年と積み重なると、事業の財務体力そのものに影響してきます。

「どんな物件でも効果が同じ」ではない

ここは重要な注意点です。「法人で不動産を買えば必ず200万円の経費になる」かというと、そうではありません。

減価償却費は、建物の構造(木造・鉄骨・鉄筋コンクリート)と築年数によって大きく変わります。木造の築古物件はすでに耐用年数が終わっていることも多く、減価償却がほとんど取れないケースもあります。逆に、RCの比較的新しい物件は長期間にわたって減価償却を計上し続けられます。

借入利息も同様で、金利水準や借入期間によって年間の利息経費は変わります。フルローンに近い形で購入するか、自己資金を多く入れるかでも結果は変わってきます。「法人で不動産」という方向性は正しくても、「どの物件を、どんな条件で」取得するかで効果は大きく異なるのです。

今期の利益が固まってきたら動き時

法人不動産の節税効果が最も活きるのは、「今期の利益が見えているとき」です。

決算月の3〜6か月前に動き始めると、物件の選定・金融機関の融資審査・登記まで間に合うことが多い。逆に、決算2か月前では融資が間に合わず手遅れになるケースもあります。

「来期から本格的に考えよう」と思っているなら、今期の着地見込みが固まるタイミングで一度、税理士と物件購入の試算を作っておくことをおすすめします。法人での不動産活用は、じっくり検討できる時間的余裕があるうちに動き始めるのが鉄則です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。